胸中穏やかではいられない記事を、ネットで見つけてしまった。
「体内にできた5センチの『柿胃石』…原因は”柿の食べ過ぎ”?医師に聞く注意点」
たしかに、柿を食べすぎるとよくない…という噂は聞いたことがある。というか、食べ物など食べ過ぎていいことはないのだから、当たり前といえば当たり前なのだが。
とはいえ、ミカンを食べ過ぎたら手が黄色くなる程度の「よくない」だと思っていたわたしは、柿の食べ過ぎが引き起こす症状に戦慄を覚えた。
記事によると、患者の胃から取り出された石の大きさはおよそ5センチ。あい太田クリニックの芳賀紀裕院長によると、
「柿の渋みの成分であるタンニンの主成分『シブオール』によって、石が形成されていくと考えられている」
とのこと。
わたしは皮ごと柿を食べるが、当然ながら渋みなど感じたことはない。
同じ柿でも「渋柿」ならば渋いに決まっているが、普通に食べる柿でもシブオールの影響を受けるのだろうか・・・。
ところがこのシブオール、渋柿でも甘柿でも含有量は変わらないのだそう。食育大辞典によると、
「タンニンの性質には水溶性と不溶性があり、水溶性のタンニンは口に入れると溶けだして渋く感じる。甘柿は、成熟に伴い水溶性のタンニンが不溶性に変わるため、口に入れても渋みを感じない」
のだそう。
――なるほど、どうりで甘いわけだ。
記事を読み進めていくと、柿を食べるにあたり「気を付けなければならないこと」が書かれてあった。
「一日に2個食べたり、いっぺんに5個食べたりした人に、柿胃石が出たという報告がある」
この一文にわたしは驚愕した。なぜなら、わたしは一度に5個の柿を食べるからだ。しかも一日に2~3回のスパンで繰り返しているわけで。
(これでは、柿胃石になりたい!と言っているも同然じゃないか・・・)
しかしその直後に、「効果的な治療法」なるものが記載されている。
「石ができた場合、コーラを飲んで溶かし、ある程度の小ささにした後で内視鏡を使って砕く治療法が効果的だとされている」
・・・コーラ?
さすがに嘘だろう。コーラといえば、体に悪い飲み物の代表格じゃないか。そんなものがなぜ、柿胃石に効果的だというのか。
「これだからヤフーニュースは当てにならん」と、ため息をつくわたし。
しかし、J-STAGE(国立研究開発法人科学技術振興機構/JSTが運営する、電子ジャーナルプラットフォーム)で、「日本消化器内視鏡学会雑誌の2008年6号」に掲載された記事の抄録を見て、ひっくり返りそうになった。
症例は63歳,男性.つるし柿6個を一度に食べた後に,腹痛・嘔吐が出現し近医を受診した.上部消化管内視鏡検査にて6cm大の胃石を認めた.柿胃石と判断し,近年の報告を参考にコカ・コーラの経口摂取や内視鏡下にERCP力ニューレを用いて直接散布などを行ったところ,数個の破片に崩壊,消失する経過が内視鏡的に観察された.本疾患に対するコカ・コーラによる溶解療法は安全かつ簡便で,医療経済的にも有用な方法であると考えられた.
なんと、コカ・コーラ溶解療法はガセネタではなかったのだ!
論文に目を通したわけではないので不確かだが、どうやらコーラの成分である炭酸が、柿胃石の中に入り込んで溶かすのだそう。
他のサイトでは、実際に内視鏡を使ってコーラが石を溶かしていく様子が確認できた。
(ならば、コーラじゃなくて炭酸水でもいいのでは・・・)
炭酸強度の問題ならば、コーラと同じ炭酸具合いの水でも同じ効果が期待できるはず。さらにそのほうが、体にも良さそうじゃないか。
すると、この疑問に対する答えを見つけた。
ファミリークリニックたまいの玉井紀男院長が、2022年10月15日放送の「まるっと!サタデー」にて、
「サイダーをかけてみたのですが、石は全く変わらず(治療)中止という形になりました。炭酸飲料の中ではコーラが一番酸度が強くて、炭酸の圧も高い。その辺が柿胃石に効果があるんじゃないかなと思っています」
と説明している。
やはり「コーラ」でなければならないのだ。
ということは、コーラであればなんでもいいのか?コカ・コーラ、ペプシコーラ、キリンメッツコーラ、百円ショップで売られているコーラ・・・。
そもそもわたしは、炭酸飲料が苦手である。年に数回しか飲まないくらい、あのシュワシュワした刺激が不得手なのだ。
それでも柿胃石を防ぐためには、コーラを飲まなければならないのか――。
こうしてわたしは「治療のため」と称して、2リットルコーラのを抱いて帰るのであった。
くれぐれも「柿の大食いをやめればいいじゃないか!」などという正論を、ぶつけないでもらいたい。
そんな当たり前のことができるならば、コーラ以前にそうしているのだから。
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