永遠に未完成であることの美しさ
力強くも美しい嬰へ長調のサブドミナントが鳴り響いた瞬間、わたしは涙をこぼすとともに「あぁ、終わってしまった」とつぶやいた。 心を揺さぶられるほどの感動を与える演奏だったのだから、当たり前にファイナル進出とな...
力強くも美しい嬰へ長調のサブドミナントが鳴り響いた瞬間、わたしは涙をこぼすとともに「あぁ、終わってしまった」とつぶやいた。 心を揺さぶられるほどの感動を与える演奏だったのだから、当たり前にファイナル進出とな...
今さらながら、来年のピアノ発表会で弾く曲について、身の丈に合わない難しい曲を二曲も選んでしまったことに、若干の後悔を抱き始めたわたし——。 もうすでに譜読みは終えたのだが、これはいわばスタート地点に立っただ...
(しまった、指が動かない・・) ピアノを弾く者にとって、指を大切にすることなど基本中の基本なのだが、よりによって、指に絶大なる負担を強いる「柔術」という競技に勤しんでいるわたしは、指の不具合にしょっちゅう悩...
研究者がすごいのは、何十年・・いや何百年経ってもなお、その分野を掘り下げ続けていることだ。「さすがにもういいだろう」と、誰もが妥協をちらつかせるレベルの成熟度に至ったとしても、「いや、まだだ」と言わんばかり...
どう足掻いても上手くいかない時がある。だが、もしも「なにかが出来るようになる前段階」だとすれば、それはむしろ好意的に受け止めるべきだろう。 ハーバード大学の某教授が言っていた、「快楽などの報酬を得るのに、努...
随分と長い年月を生きてきたが、それでもまだ俄かに信じられないような事実を突きつけられたり、「なぜこんな簡単なことに気付かなかったのか」と唖然としたり、それ故に人間が持つ可能性の奥深さに驚愕させられたりと、小...
一つのことに没頭し過ぎると、ついそれが「自分にとってすべて」と感じてしまったり、または、それが自分にとって特別なことだと思い込んでしまったりするもの。だが、よくよく考えてみると、どれもこれも自分という一人の...
(マズイぞ、なぜ直前になってこんなことになるんだ・・・) 今日は、ピアノの先生の先生・・すなわち”師匠”のレッスン日である。 師匠の前では、いわゆる「曲」を弾くことはな...
「悪くないわよ、ただ・・なんていうか小さくまとめ上げてるというか、こじんまりとしているというか」 大の苦手であるモーツァルトのソナタを、丁寧かつ精魂込めて弾き終えた直後に、先生はボソッと呟いた。そして、さら...
「素晴らしいじゃない。ようやく、モーツァルトらしくなったわね」 喜びというより、むしろ涙ぐんでいる先生を見ながら、わたしも鼻の奥がツンとするのであった。 それにしても、まるで変化のなかった8か...
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