クロアソン・アイス・ボム

 

わたしは、食事の際にあれこれ少しずつつまんで食べる・・ということができない。目の前に出された料理を瞬時に見定め優先順位をつけ、その順番通りに完食していくのがわたし流。

そのため、米は米だけ、おかずはおかずだけで食べるわたしを見て、「そんな食べ方で美味しく食べられるの?」と不思議に思われることがよくある。だが、言うまでもなく”その食べ方”こそが美味いのだ。

とくに、白米に至っては「米を米だけで食べる贅沢」が許されるなんて、この上ない幸せではないか!それをわざわざ、おかずや漬物などで汚す必要などどこにもない。米は米として白いまま食べるのが最高の贅沢なのだから。

 

とはいえ、カレーライスについてはそうともいえない。まぁ、あれは米の上にルーがかかっているので、わざわざ分離して食べるほうが難しい上に、ルー単体ではなく米と一緒に食べるのが正しい食べ方なわけだが。

むしろ、米とルーの残り具合いを調整しながら食べ進むのが、カレー攻略のもっとも集中するべき点であり、最後のひと匙で見事に完食した時など、満足に加えて圧倒的な達成感を味わうことができる。

 

そんなわたしにとって、非常に理解し難い食べ物がある。それはシュークリームだ。

構造としては、シュー生地でできた器の中にたっぷり生クリームが収められているのだが、わたしはいつも、シュー生地を受け皿代わりにして生クリームを食べて終わり・・である。よって、なんのためにシュー生地が存在するのか分からないというか、勿体なくてシュークリームを買うことができないのだ。

(どうせなら、生クリームだけで売ってくれればいいのに・・)

というわけで、シュークリーム専門店である「ビアードパパ」の前を通るたびに、もったいない精神に苛まれるわたしなのである。

 

ところが、近所のブーランジェリーでとんでもない期間限定商品が発売されていた。その名も「クロアソンのアイスサンド」

ちなみに「クロアソン」とはクロワッサンのことで、フランス語風に発音するとこうなる。なお、クロアソンの意味は「三日月」で、バターを何層にも重ねて焼き上げられた美しいクロワッサンを、見事に表現しているではないか。

 

そんな「クロアソンのアイスサンド」を味見するべく店へと向かったわたしは、クロアソン生地の中へねじ込むアイスが三種類あることで悩まされた。バニラビーンズ入りの濃厚バニラ、ストロベリーマスカルポーネ、そして塩バターキャラメル・・いったい、どれを選べばいいんだ。

おまけに、暑い季節限定の人気商品ということで、今の時期を逃したら次は来年までおあずけをくらうことになる——よし、全部いくしかない。

 

どうにも「限定商品」という謳い文句に弱いわたしは、どれか一つを選ぶことができず三種類すべてを試すことにした。ところが、登場したクロアソンのアイスのデカさに驚いた——で、デカい!!!

クロアソンの生地自体はそこまで大きくないのだが、その生地に包み込まれたアイスの玉がそれはもう見事なサイズ感。これはどう考えても、クロアソンを受け皿にしてアイスをかじる仕組みなのでは?!と思ってしまうほど、立派な野球ボールが鎮座しているではないか。

・・そう、要するに「シュークリームのアイス版」みたいな構造になっているわけだ。

 

シュークリームの皮は食べない派のわたし。だが、クロワッサンは大好物である。しかしながら、アイスと一緒に食べることには抵抗を感じずにはいられない。ここはやはり、アイスはアイスだけクロワッサン生地はクロワッサンだけで食べるのがいいだろう——。

そんなことを思いながら店を出たわたしは、8月の強い日差しによる猛攻撃をくらった。こ、これはマズい・・優雅にアイスだけを食べている場合じゃない!!

 

もはや一分一秒を争う危機的な状況に、アイスもクロアソンもあったもんじゃない。灼熱地獄によるメルトダウンが先か、それともわたしの人外レベルの咀嚼力が上回るか、そんな仁義なき戦いの火蓋が切って落とされた。

(とりあえず、サクサクなクロアソン生地をアイスに付着させることで、メルトダウンを阻止。よし、この勢いで一気に口の中へ掻っ込むぞ!!)

 

夏限定のクロアソン・アイス・サンド——それは、冷たいアイスとサクサクのクロアソン生地との、相性抜群の逸品である。そして、またの名を「真夏のタイムトライアル・ボム」と呼ばれているとかいないとか・・。

 

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