「月曜の午前指定で、プリンが届くからよろしく」
突如届いた、某先輩からのメッセージを読んだわたしは歓喜した。
なぜなら、彼が作るプリンは絶品な上にボリュームが半端ないからだ。通常の菓子店では購入できないほどの、例えるならばホールケーキばりのサイズ感に加えて、几帳面かつ己に厳しい性格が見事に反映された完璧な作品・・それこそが先輩の作るプリンなのである。
おまけに、固めの食感・・いわゆる”昭和のプリン”のようなしっかりとした弾力が好みのわたしにとって、先輩の作品はまさに期待を裏切らない逸品といえる。しかも今回は、なんと3,000㎉の特大サイズというから、月曜日が待ちきれないのは当然である——あぁ、バケツか何かで届くのかな?
・・というような経緯からも、わたしは月曜の午前に向けて入念に胃袋の調整を行った。
やはりなんといっても、プリンが届いたときにベストな状態で迎え入れることが重要。腹が空いていないだの、前日に甘いものを食べ過ぎただの、そんなくだらないことでプリンの価値を落としては先輩に失礼である。
受け取る側の礼儀というかマナーというか、万全の状態でプリンと対峙することこそが、前日のわたしに求められる姿勢・・いや、誠意なのである。
そんなわけで極力甘いものを避けた結果、たどり着いたのはインドカレーだった。
チキンカレーとほうれん草カレーにケバブとチーズナンを注文したわたしは、異国のスパイスで味覚と嗅覚のリセットを試みた。やはり、日本生まれの昭和プリンを食べるにあたり、日本の食事をとっていたのでは差がつかない。ここは一気に、海外へ飛ばすというのが妙案だろう——ということで、辛口のカレー二種類と大盛りのケバブをハフハフ言いながら食べ切ると、額から垂れ落ちる汗を拭いながらチーズナンで口を整えた。
さらに、明日届くプリンのまろやかさを想像しつつ、「カレーとケバブで辛さの刺激は与えたが、さらに酸味のインパクトを加えたほうが、まろやかさが際立つのではないか?」と考えたわたしは、冷蔵庫で眠るキウイフルーツに手を伸ばした。
キウイは皮ごと食べるのが常識。とはいえ、グリーンキウイは表面が毛羽立っているので舌触りがよくないが、サンゴールドキウイならば皮もツルツルなので、丸ごとガブッと齧りつくのが最も美味な食べ方。
こうして、デザートにキウイフルーツ5個を摂取したわたしは、翌朝の戦いに備えて早々にベッドへとダイブしたのである。
*
(マズい・・ぜんぜん眠れないぞ)
久々のビッグプリンへの期待が大きいせいか、横になったはいいが一向に眠くならない。
わたしには「睡眠をとることで脳と体をリセットし、心身ともに絶好調な状態でプリンを受け取らなければならない」という責務があるわけで、ここはどうにかして寝付かなければならない。
だが、遠足前日の子どものように、「ワクワクが止まらない」にプラスして「職責を全うできるかどうかの緊張感および責任感」というプレッシャーのせいで、脳みそは冴えわたり神経が過敏になり、とてもじゃないが眠ることなどできそうにない——。
こうして、気づけばブラインドからは朝日が漏れ、鳥のさえずりや蝉の鳴き声が賑やかに聞こえてくるではないか——あぁ、一睡もせずに朝を迎えてしまった。
まぁ、眠れなかったのであれば仕方がない。早起き(?)ついでにストレッチでもしておこうと、YouTubeを見ながら軽く身体を動かすわたし。
(なんて健康的な朝なんだ・・)
これから、三千キロカロリーの巨大プリンとの一戦を控えているだけあり、前日から胃袋やフィジカルの調整に余念がなかったのは事実。
しかしながら、冷静に考えてみると「三千キロカロリーのプリンを一気に食べる・・という選択をしなければ、もっと健康的なのでは?」という、誰もが深く頷くであろう正論が脳内を過ぎる。
(わたしはなぜ、こんな努力をしてまで糖尿病へ近づこうとしているのだろうか・・)
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今も昔も、正論や常識でコントロールできないものこそが「欲望」という魔物なのだ。










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