ようこそ、官能の世界へ――
***
「じゃあ脱いでもらおうか」
和子はワンピースから腕を抜き、その場にストンと脱ぎ捨てた。
――もうどうでもいい
想いを寄せていた男から三下り半を突きつけられたのは、昨夜のこと。
もはやすべてがどうでもよかった。
恋というより大きな愛を一途に捧げた和子にとって、やり場のないその想いは苦しみ以外のなにものでもなかった。
その直後、過去に一度だけ面識のある氷室にLINEをし、今日会う約束を取り付けた。
面識があるというより、氷室と和子は裸を見せる仲だった。
過去に一度ベッドを共にしただけだが、氷室が好むカラダは熟知しているつもり。
和子は入念に準備をした。
女とは哀れな生き物だ。
傷ついた心を癒す手段として、それを超える満足あるいは快楽を求める。
時には痛みすらその糧となる。
和子はリビングにある大きな姿見で、一糸まとわぬ自分の姿を見つめた。
窓は開け放ち、夏の日差しとわずかな風が汗ばんだ肌にまとわりつく。
形の良い豊満な乳房をわしづかみし、鏡ごしにその谷間を見つめながら呟いた。
――泣いてるヒマなんてない、進まなきゃ
言い寄る男など数え切れぬほどいた。
それなのに和子が愛した男はただ一人、今はもう名前すら思い出したくないその男だけだった。
他人の気持ちを手に入れることなど、ギャンブルよりも不確実。
そのうえ難攻不落の相手を選んでしまった、自分の見る目のなさが悔やまれる。
それでも愛してた――
涙をぬぐいながら、お気に入りのショーツを引っ張り出す。
ビクトリアシークレットの真っ赤なティーバック。
これが今日の勝負下着だ。
首筋にドルチェ&ガッバーナの香水をワンプッシュ。
どうせすぐ脱ぐんだからとノーブラのままワンピースを羽織り、ショルダーバッグ片手に氷室の元へと向かった。
*
間接照明が怪しいムードを醸し出すマンションの5階で、氷室は待っていた。
「久しぶりだね」
穏やかな笑顔で出迎えた氷室は、和子のバッグを受け取った。
そして和子は逆らうことなく、真っ暗なベッドルームへと誘(いざな)われた。
「じゃあ脱いでもらおうか」
その言葉を聞き終わらぬうちに、和子はワンピースを脱ぎ捨てた。
「全部脱いで」
真っ赤なティーバックを片手で脱ぎ捨てると、氷室はベッドを指さした。
この前もそうだった。
氷室はいきなり手を出さない。
和子を全裸にさせると、自らベッドに横たわらせる。
そして全身を舐めまわすようにライトで照らしながら、まずは視姦(しかん)を楽しむ。
一通り楽しんだ後、氷室は冷蔵庫から冷えたローションを取り出した。
「和子のためにキンキンに冷やしといたから」
暗闇でほほ笑む氷室の表情は不気味そのもの。
和子の肌に冷たいローションが垂れる。
ビクッと体をよじる和子を横目に、氷室は小さなハケを手に取った。
「じゃあ、いくよ」
そういうと、ハケを使って和子の敏感な部分を撫でまわしはじめた。
首筋、乳首、わき腹、そして――。
ハケの絶妙なタッチと冷たいローションのコントラストが、和子の理性を失わせる。
「そろそろいいかな?」
そう聞かれた和子は、潤む瞳で氷室を見つめた。
「お願い、しま、す」
ハケを置いた氷室は、卑猥な形状のマシンに持ちかえた。
「前回よりちょっと強くしてみようか?」
好奇心溢れる顔でのぞき込む氷室。
和子は黙ってうなずいた。
マシンのメモリをカチカチと回し、強いレベルの刺激にセット。
「・・いくよ?」
ローションを滑らせるように、マシンの先が和子の敏感な部分に触れる。
あっ・・・
・・あぁっ
い、いたい・・・
失恋直後の和子にとって、この程度の痛みなど大したことはない。
むしろ、痛みでツラさを忘れたいのだから。
「もっと足広げてみようか」
言われるがままに両足を開いた。
氷室の眼前に、ローションが滴る和子の秘部が現れた。
「痛かったら言ってね」
優しい言葉とは裏腹に、躊躇なくマシンを当てる氷室。
和子は唇をギュッと結び、覚悟を決めた。
***
――そう、これこそが全身脱毛のリアルな実況中継だ。
(やや盛ってるが)
赤の他人に全裸をさらけだすことなど、VIO脱毛以外にないだろう。
全裸にハケで冷却ジェルを塗りたくって光を当てる。
皮膚が薄い部分などは、たまに照射によるピリッとした痛みを感じることもある。
そして恥ずかしい部分こそ脱毛箇所となるため、羞恥心などどこ吹く風で秘部をさらけ出す。
その結果、客は全身ヌルヌルで大開脚しながらマシンによる照射を受ける。
*
視座を高く持つことは、キャリアを構築する上で重要な観点だ。
エロい話だと思って読めば、何でもエロくなる。
それが視座というかは置いといて、目線と表現次第で真逆の発想すら引っ張り出せる、ということにふと気付いた。
――オチありの官能小説なら、書けそうだ。
超真面目に読んじゃったじゃないですか(笑)
和子って古風な名前にビクトリアシークレットといギャップも何とも言えませんね
(必死に、昭和っぽい名前考えた笑)