田舎と都会の大きな違いといえば、「どれだけ自然が残っているか」という点だろう。
コンクリートジャングルと揶揄される都心など、人工的に緑を植えてまで自然を作り出しているというのに、ちょっと田舎へ足を運べばそれこそ見渡す限りオールグリーンの景色が広がっており、どちらで暮らしているかによって自然に対する”当たり前”の感覚も変わってくるわけだ。
そんなわけで、久しぶりに栃木の山奥から都会へ出て来た相方が、他愛もない内容だが興味深い話をしてくれた。
「あー、ようやく膝の腫れが引いてきた」
そう言いながら左右の足を見比べているのだが、そもそも元から足が太いのと、両膝の靭帯を断裂しているせいで水が溜まっていることから、その足が腫れているのかそうでないのかの区別がつかない。
だが、意外だったのはその次のセリフだった。
「三日前、キアシナガバチに刺されたんだよねー」
まるで蚊に刺されたかのように、当たり前に言うから驚きではあるが、田舎では蚊と同じくらいハチもブンブン飛び回っているのだろうか。
さらに、いかに「ハチが日常的に存在する生物なのか」を裏付ける証拠品が登場した。
「で、すぐに(ハチを駆除する)スプレーガンでシューッてやったら全滅した」
刺されてすぐに駆除できる・・すなわち、ハチ駆除製品が手元にあること自体が、都会ではあり得ない備蓄品といえる。
だが、ハチ駆除の様子を再現する相方の動きを見ながら、わたしはふと思った。
あのとき・・友人である石井(仮名)が職質に遭ったとき、ソレが発見されたならば「署までご同行願います」とはならなかったのではなかろうか——。
*
いつだったか、友人の石井(仮名)が「スタンガンを購入した」というので、現物がどんなものかを確認するべく見せてもらったことがある。
その後、車の後部座席へスタンガンを置きっぱなしにしていた石井は、運悪く職質に遭いスタンガンを発見されてしまったのだ。
無論、他人に危害を加える目的など一切ないし(石井はそんなものを使わずとも強い)、あくまで「念のための自己防衛手段」としてスタンガンをを購入したわけだが、なんと、護身用といえどもスタンガンを持ち歩くことは、軽犯罪法(第1条第2項)違反に該当するのだそう。
そんなわけで、哀れにも石井は書類送検(不起訴)されてしまったわけだが、この件について、半分はわたしの責任である。
そもそも、わたしが「スタンガンを見せてくれ」などと言わなければ自宅から持ち出すことはなかったし、結果的に石井の指紋やDNAが採取されることもなかったのに——。
この事件を思い出したわたしは、謝罪の意をを込めて、石井にハチ駆除スプレーを贈ることを思いついたのだ。
強力かつ大量噴射が可能な「バズーカタイプ」のハチ駆除スプレーは、無風時の最大噴射距離が12m、さらに3メートルまで近づけば巣ごと駆除できるという、恐るべき効力を持っている。
無論、キャンプへ行くとか山林へ入るといった目的・・すなわち「正当な理由」なくハチ駆除スプレーを持ち歩くのは問題があるが、少なくともスタンガンや催涙スプレーの所持で追及されるよりは、逃げ道・・というか言い訳はできるだろう。
繰り返しになるが、他人に危害を加える目的でハチ駆除スプレーを使用するのは違法だし、ハチ駆除以外の目的で使用することも禁じられている。
そんなことは常識的に理解している上で、「どうせ職質されるなら、スタンガンよりハチ駆除スプレーのほうがマシだろう」という話であることを、念を押しておこう。
とにもかくにも、ヒトは「噴射攻撃に弱い」という性質がある。たとえ有害物質を噴射されずとも、強力な圧力で放水されれば死に至るわけで、見知らぬ他人から何かを噴射されたら、慌てて逃げるというのが正常な行動といえる。
まぁ、その延長に銃の存在があるのだから、やはり他人に危害を加える目的で何かを発射するのは禁止して然りだが、不可抗力による攻撃から身を守るとなれば、さすがに手段を選んでいる暇はない——なんて事態に遭遇しないことを、切に願うばかりではあるが。
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それにしてもここ最近、ダニだのハチだの害虫駆除の話題が尽きないなぁ・・と、自然界をたくましく生きる彼らの存在に、嫌悪感を覚えつつも畏怖の念を抱く、ちっぽけな人間(わたし)なのであった。










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