夏について愚をのたまふ

 

ふと疑問に思ったことがある。それは、いわゆる「真夏」ってやつがいつ訪れるのだろうか・・いや、もうすでに8月半ばなのだから、いつ訪れたのだろうか?ということだ。

 

ここ数日、東から西へと逆相する異例の進路をたどった台風のせいで、千葉県では大雨による冠水のため帰宅ができなくなったり、自動車が水没してしまい新車が廃車となったり、「たかが雨」のせいで多くの人間がひどい目に遭った。

そして台風が通過した後も、唯一の楽しみである「台風一過」の晴天は訪れず、今日日未だにすっきりしない曇天が続いているではないか。

 

通常、台風という名の破天荒で暴力的な独裁者が、好き放題に地上を荒らしまくった後には、ご褒美というかお詫びというか、澄み切った青空と爽やかで乾燥した空気が待っているもの。

それなのに今回は、まるで梅雨前線が停滞しているかのようにいつまでたっても青空は顔を見せず、天を仰げばどんよりとグレーの雲が覆い尽くしている。しかも、ふとした拍子に雨が降るというゆるみっぷりには、いい加減に堪忍袋の緒が切れそうである。

 

そうこうするうちに、気がつけば8月も後半に差し掛かり、もうすぐそこに秋が控えている——え、いつ夏がきたの?!

思い返せば、「真夏の青空に生える、大きな白い入道雲」という景色を、今年は一度も見ていない。それなりに毎日外へ出ているが、見上げる空に青色は見当たらないし、それどころかブラインドの隙間から漏れ伝わるのは「曇り空」を示す白みがかった光ばかりで、「照りつける灼熱の太陽」はどこへ身を潜めてしまったのか。

 

東京を含む関東は7月20日に梅雨明けとなったが、その後もずっと微妙な天気が続き、真夏を象徴するような晴天が何日あったのか、むしろ記憶にない。

そして8月に入り、暦の上では秋を迎える立秋(8月7日)が過ぎたにもかかわらず、梅雨の延長のようなイマイチな天気が続く中、気がつけば夏の風物詩である「お盆」や「台風」を迎えたかと思えば、あっという間にそれらも去り”イマ”である。

 

(・・で、いったいいつになったら「真夏」はくるの?)

 

わたしが思い描く夏は、それはもう鮮烈かつ過酷なシーズンであり、命の危険を感じるほどの暑さと日差しに狙われながらも、しょんぼりする気持ちを吹き飛ばす青空や、じっとしていられないパワー漲る太陽を見上げるのがお決まり。

それなのに今年は、天を仰げば曇天模様だし気を緩めれば雨が降るし、こんな優柔不断で弱々しい天候を「夏」と呼ぶことはできない。

 

ましてや「真夏」を名乗るには、連日連夜35度を超える猛暑が続き、熱中症により何十人・・いや、何百人もの人間が救急搬送されたり、アスファルトがあまりの暑さでブヨブヨになったり、店頭の食品サンプルがメルトダウンしたり、外壁や窓枠に使われているシーリング材がドロドロに溶けたり・・そういった事件が起きるのが、鮮烈かつ過酷な「真夏」という季節なのだ。

茹だるような暑さもなく、引っ込み思案な青空はまんまと雲隠れし、台風一過すらそっぽを向く始末——こんなのは夏とはいえないし、じゃあいつになったら理想の夏がくるというのだ。

 

 

というような文句を垂れながらも、一歩ずつ秋へと向かう日本の夏。

あぁ、夏を司る神よ・・頼むから「これぞ、ザ・真夏!」と胸を張って自慢できるような青空と太陽、そして灼熱地獄の猛暑日を、われわれ日本人に与え給え。いかんせん、四季を持つ由緒正しき国なのだから、メリハリのある季節感を提示しなければ嘘つきである。

真夏を体感せずに残暑など、とてもじゃないが受け入れられない。せめてあと二週間、本気の夏を示したまへ。