買ったはいいが滅多に使わないもの・・といえば、何が思い浮かぶだろうか。
ミニマリストならば無駄な買い物とは無縁だが、多くの者は「これがあったら便利かも」とか「いつか使うかもしれない」といった、滅多に訪れない”かも”に支配された結果、最悪の場合『二度と日の目を見ない商品』を購入する傾向にある。
そして、そんな期待を背負って購入された商品のほとんどが、棚の奥へしまわれていたり謎のオブジェとしてほこりをかぶっていたり、捨てるに捨てられない状況で眠っているのが実情。
ではなぜ、不要なオブジェ・・端的に言い換えれば「粗大ごみ」を、さっさと捨てることができないのかというと、「買ったはいいが、一度も使うことなく捨てるのは勿体ない」という理由に他ならない。
無論、メルカリなどで売ることも可能だが、落札までのやり取りや梱包・発送の手間等を考えると「面倒くさすぎてやってられない」というのが本音。そんなことならば、「いっそのこと捨ててしまうほうがラクだ」と思うわけだが、いざ捨てるとなると勿体ない精神が再燃することで、「もしかすると、いつか役に立つ日がくるかもしれないし・・」という、決して来ることのないXデーに期待してしまうのである。
そして今、わたしはオレンジ色の網の束を忌々しい目で睨みつけている。
光沢のある美しい橙色は、中東の民族衣装を彷彿とさせる神秘さがある。そして、幾重にも束ねられた紐というか網のかたまりは、まるで上品な地引網のよう——。
いったい何を指しているのかというと、ハンモックの寝床部分となる「網」である。
二年前、”ウィーンの森でハンモックに揺られながら、アールグレイ片手にザッハトルテをつまむ”という野望を叶えるべく、ネットで購入した折り畳み式のハンモック。
その後、諸事情により活躍の機会を失っていたが、とはいえ春先や秋が深まる頃には再びハンモックに揺られる日がくるだろう・・と、寝床の網だけ室内に取り込み、スタンド部分はベランダに放置しておいた。
あれから時は過ぎ、マンションの大規模修繕を迎えた。外壁補修の際に「作業の邪魔になるので、ベランダに物をおかないでください」という警告が発せられたにもかかわらず、それを無視してハンモックのスタンドを出しっぱなしにしていたわたし。
そんな「ハンモックへの愛情」を察したのか、作業員の方々は邪魔なスタンドに文句ひとつ言わず、黙々とベランダの補修を進めてくれた。
今思えば、あのとき粗大ごみとして捨ててもよかったのではなかろうか——。
雨の日も風の日も、灼熱地獄の夏も刺すような寒さの冬も、ハンモックの足場は黙ってベランダに佇んでいた。そして相棒である寝床の網は、タペストリーというにはだらしないが、なんとなくオブジェの延長としてコンクリートの壁に引っ掛けられていた。
こうなることはおよそ予想できていたが、購入時に一度しか使われていないハンモックを捨てる・・というのは、さすがに勿体ない。かといって、いつまでも粗大ごみもどきを放置しておくのも、どことなくモヤモヤするわけで。
(自宅にある筋トレ器具みたいなもんだな・・)
やる気満々で買ったはいいが、何回か使ったら椅子や物干しと化す代表が筋トレ用の器具である。特にチンニングマシンなど、百パーセントの確率で物干し台となるのだから、幅や高さのある器具を狭いマンションに置くのは、物理的に無理があるのだ。
そんな筋トレ器具と同様に・・いや、使い道がないという点で「それ以下の存在」となるのが、このハンモックである。
ベランダで野ざらしのスタンドには、洗濯物を引っ掛けることすらできない。そして、室内でだらりとぶら下がっている網は、タペストリーにすらならない。これぞ正真正銘、粗大ごみである。
季節は夏のど真ん中。このクソ暑い最中にベランダでハンモックに揺られたところで、三半規管を刺激する独特な揺れと熱中症により、救急車を呼ぶことになるのがオチ——ということで、1DK以下のマンション暮らし民に告ぐ。ハンモックと筋トレマシンは、決して買ってはならない。
筋トレマシンを買うくらいならば、エニタイムフィットネスに入会しなさい。ハンモックに揺られたいならば、公園の木にネットを引っかけるタイプを買いなさい。
決して、自宅でラクをしようなどと考えてはならない。これだけは忘れないでもらいたい。
(あぁ、マジで邪魔なんだけどハンモック・・)










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