ここ数日、わたしの身体に異変が起きている。具体的には、日を追うごとに”恐るべき痕跡”が記されていくのだ。
あえて一つずつ、毎日カウントしていることを告げるかのように、昨日までは何もなかった右の膝裏に今日は新たな赤い刻印が——そう、わたしは・・いや、この家は呪われているのだ。
最初の異変は四日前、首の左側に起きた。
キスマークにしては小ぶりな赤い刻印は、わずかな搔痒感はあれどそこまで気になるものではなかった。だが翌日、今度は左の太もも付け根に新たな印が現れた。
そして次の日は腰に、昨日は左の大腿部に、それぞれ一つずつ赤い刻印が出現したのである。
わたしは恐怖に震えた。
なぜ、一気に攻撃せず毎日一つずつ刻み込んでいくのか。そして、なんの目的でこんな恐ろしくもいやらしいアプローチを仕掛けてくるのか——。
敵の正体は一つしかない。そう、ベッドかソファに「ダニ」がいるのだ。
赤い皮疹(ひしん)を断続的にポリポリと搔きむしりながら、わたしはすぐさまTシャツをかぶり短パンを履いた。
なぜなら、自宅にいる間はかなり無防備な格好——正確には「ほぼ全裸」で過ごしているため、露出する面積が広いゆえにダニの野郎も甘く見ているのだろう。ならばまずは、皮膚の露出を抑えることで奴らの好き放題を阻止することから始めよう・・そう考えたわたしは、久しぶりにまともな衣服(?)を身にまとった。
そして、Amazonにて「ダニ捕りシート」なる商品を購入すると共に、シーツとタオルケットを洗濯機へ放り込み、マットレスやベッド周辺を掃除機で念入りに吸い取った。
(あぁ、考えるだけで恐ろしい。わたしはいつの間にかダニと共に眠り、ダニにカラダを弄ばれていたのか・・)
目に見える虫と一緒に暮らすのも気分は良くないが、目に見えない無数のダニと枕を共にしていたと思うと、それはそれで不快極まりない。
しかも人間は、目に見えるものしか信じない性質にあるため、直接的な攻撃などしてこないゴキブリを見つけたら発狂しながらも叩き潰すのに、視認できないダニは刺されるまで気が付かないのだから間抜けというか滑稽だ。
それにしても、我が家のダニが一匹であるはずもないので、奴らは日替わりでわたしを攻撃していることになる。そんな計画的なことが・・というか、それほどの高い知性があるとでもいうのか?
ダニについてやや興味を持ったわたしは、奴らがどんな目的でヒトを刺すのか調べてみた。すると、拍子抜けするような驚くべき事実にたどり着いた。
なんと、わたしが刺された「ツメダニ」という奴らの主なエサは、「チリダニなど他のダニ」なのだそう。
ちなみに、「イエダニ」は別名”吸血ダニ”と呼ばれており、読んで字のごとくヒトやネズミの血を吸うことで腹を満たしている。だが、ツメダニに関しては他のダニを捕食するなど生きた虫を好んで食すため、ヒトの血を吸うことはない。
ではなぜ、ヒトを刺すのか——その理由は、まさかの「間違ってヒトを刺す」のだそう。
そんなバカな話があるか!? 一体どうしたら「その辺にいるチリダニかなんかと間違って、ヒトの皮膚を刺してしまいました。テヘッ!」などというオチに至るのか。
当人らに尋ねたわけではないので断言はできないが、脳みそが少ないツメダニは「偶然触れた人間の肌を、チリダニと間違えて刺す」とされている・・いやいや、もう少しちゃんと確認してから刺せよ!!と叫びたくなるほど、馬鹿げた間違いではないか。
しかも、「たまたま今回だけ、間違ってしまいました!」ではなく、我が家のツメダニたちは連日連夜、間違ってわたしを刺している。毎日毎日、性懲りもなくチリダニと間違ってわたしの皮膚を刺すとは、どんだけバカなんだよ!!!
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とにかく、ダニ捕りシートが届いたら小さなバカどもともおさらばである。まぁ、そんな人工物に捕獲されるダニもバカだが、ツメダニと間違ってヒトを刺すよりはマシなバカであろう。










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