突如、左手の親指と小指に出現した腫れと痛み。思い当たる節といえば、ブラジリアン柔術の練習中に痛めたか、それともピアノの練習をしすぎたせいか——。
それぞれの指は明らかに腫れあがり、握り込むような屈曲が困難な状態。ということは、大なり小なり指の関節周辺を負傷していると思われる。しかも、柔術とピアノのどちらも指を痛める可能性がある動きをするため、とりあえずは応急処置として、湿布を貼ったりテーピングで指を固定したりして、少しでも痛みを抑える措置を施した。
そして、この状態で改めてそれぞれの競技(?)に取り組んでみたところ、なんとも微妙な結果となったのだ。
まずはピアノだが、たしかに小指から始まる音を打鍵する際に、強さと角度によっては激痛が走る。
そりゃそうだ、こんなにも細くて頼りない指一本で、強い音を出そうとすれば関節に無理がかかるのは目に見えている。だが、小指を使うたびに痛いというわけではなく、誤った角度で鍵盤を叩いたときだけ激痛が生じるので、必ずしも「打鍵が原因」とは限らない。
さらに、親指に至っては打鍵の瞬間に一切の変化も見受けられない。むしろ、アルペジオや音階の途中で、鍵盤の側面に親指が引っかかることで激痛が走るのだ。要するに、垂直の力ではなく水平方向の動きがネックとなる様子。
(うーん、小指はまだしも親指の痛みの原因はピアノじゃないな・・)
思わず声が漏れるほどの”まさかの痛み”を受けて、弱腰になったわたしはそそくさとピアノの蓋を閉めるのであった。
・・となると、十中八九痛みの原因は”柔術”ということになるが、「利き腕の右ではなく、左手の親指と小指」というところが引っかかる。そもそも、指が痛くなるほど力強く握ることもなければ、指を痛めた瞬間があったわけでもない。
つまり、蓄積疲労でもない限り「いつ負傷したのか分からない」というような惚けた状況はありえず、身に覚えのないこの怪我の原因が柔術だとは思えないのだ。
その証拠に、スパーリングの途中で痛みを感じることはあれど、特定の動作でピンポイントに激痛が走ることはない。これは、ピアノを弾いていて「アルペジオで指が引っかかったときに痛い」のと同じくらい、なんというか”原因として特定できるレベル”ではないのだ。
(痛めたきっかけは柔術じゃない。となれば、いったい何が原因なんだ・・・)
改めて親指と小指を動かしてみるも、やはり痛みを感じるし、腫れがひどくて熱っぽい気がする——おかしい、なぜこんなことになってるんだ。
悶々としながらジムを後にしたわたしは、ペットボトルの水をラッパ飲みしつつ、電車の時刻を調べようとポケットからスマホを取り出した。
その瞬間——左手の親指と小指に激痛が走り、反射的にスマホを落としてしまったではないか。
(・・なるほど、痛みの原因はスマホだったのか)
*
思い返してみると、たしかにわたしは左手一本でスマホを扱っている。動画を視聴するにもSNSをスクロールするにも、左手の小指の内側にスマホを乗せて親指を上下左右に動かすことで画面を操作している。
なにより、見事にドンピシャで痛いのだから、間違いなくスマホが原因だと思われるが、それにしても、これほど唐突に”ある日突然痛くなるもの”なのだろうか。もう少しなんていうか、徐々に痛みが増していくような過程を辿るものではないのだろうか——。
ちなみに、指への負担を考慮してスマホリングを貼り付けるなど、予てから指を労わる意志を示していたわたし。にもかかわらず、「リングに入れる指への負担が大きい」という不安から、手のひら全体でスマホを受け止めつつ、すべての指で握り込むようにしてコントロールするようになったのだ。
だが、いつしか小指と親指の2本で支えたり操作したりするようになり、その結果、酷使され続けた2本の指がついに逝ってしまった・・というのが本件の顛末だろう。
(スマホをいじるのは右手・・いや、両手にしよう)
利き腕は右だが両利きに近いわたしは、日常生活の多くを左手で行うため、箸を握るにも歯磨きをするにも左手が痛むと動作が鈍る。よって、しばらくはリハビリがてら両手を使う生活を強いられそうだ。
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