点鼻薬一択

 

そういえば渡米前、ぎっくり腰やらめまいやら結膜炎やら右膝捻挫やら鼻腔内の炎症に見舞われたわたしは、「こんな状態で、柔術の試合などできるのだろうか」と暗い気持ちで日本を発った記憶がある。

そんなことなど微塵も忘れていたのだが、帰国後にチームメイトから「あれ、そういえばぎっくり腰ってどうなったの?」「めまいもあったよね?僕、そのリハビリでスパーお願いされた記憶あるけど・・」「目もヤバい感じになってたよね?他にもどこか傷めてた気が・・」と言われて、初めて「あぁ、そんなこともあったな」と思い出したのである。

——本当に、いつどこで治ったんだろう。

 

いつも通りピンピンに元気な状態のわたしは、一体いつ怪我が治ったのかは覚えていないが、おそらくアドレナリンの影響と環境の変化により、いつの間にか治癒されてしまったのだと予想する。

そんなわたしでも、唯一治らない症状があった。それは鼻炎だ。

何らかのアレルギーだと思われるが、渡米前から鼻腔内の調子が良くないまま今に至るわけで、アレルゲンを取り除かない限り症状の改善は見込めない。とはいえ、アレルゲンは除去できるレベルのものではないことも分かっているので、抗アレルギー薬を服用するしかないのか・・と憂鬱な気分でかかりつけ医の元を訪れた。

 

「鼻は、点鼻薬一択ですよ」

全身の倦怠感や眠気を伴う抗アレルギー薬しかない・・と覚悟していたわたしは、まさかの発言に驚いた。目なら目薬、鼻なら点鼻薬。つまり、内服薬ではなく鼻へ薬を噴霧あるいは注入することで、症状が改善されるわけだ。

 

ドクターいわく、鼻の場合は鼻腔内の粘膜へ直接シュッとやるのが効果的なのだそう。というより、むしろそれしか効果はないくらいの勢いで、点鼻薬が効くらしい。

言われてみれば、目の炎症は目薬一択といってもいいくらい、直接点眼することで治療を行うのが一般的。あれと同様に、独立した器官である鼻も、直接薬剤を塗付することが最も効果的な治療法なのだ。

 

今まで、アレルギー症状が出たら内服薬を飲むことで症状の緩和を図ってきた。だがあれは、全身に反応が出る前提の処置であり、今回のように鼻のみに症状が現れている時には、内服よりも点鼻が有効。

(要するに、患部を狙い撃ちするわけか・・)

言われてみれば当たり前のことだが、局所的な炎症に対してわざわざ内臓で吸収させるような方法をとる必要はない。そう、鼻なら鼻を狙い撃ちすればいいではないか。

 

大した事ではないのだが、こんな当たり前のことにすら気づかなかったわたしは、想像力が欠如しているというか常識知らずというか、病気に関してあまりに他人任せだったことを恥じた。

独立した器官なのだから、まずはそこを集中攻撃するのが当たり前じゃないか——。

 

そんなわけで、噴霧タイプと注入タイプの点鼻薬をもらってきたわたしは、早速、鼻に向かってシュッと一吹きしてみた。特に変化はないが、少なくとも内服薬を嚥下した時より気分がいい。

それよりなにより、鼻の粘膜に直接吹きつけることが効果的な処置であることを、粘膜自身が感じている(気がする)わけで、やはり最適な治療法というものを選択しなければ意味がないのだ。

 

さらに、患部以外の健康な部分に悪影響を及ぼす可能性を踏まえると、何でもかんでもとにかく薬を飲んで、内臓に負担を与えるやり方がいいことではないくらい、素人にも理解できる。

そう、最低限このくらい頭を使わなければ、自身の適切な健康管理などできるわけがない。すべてを「医者という他人」に委ねてしまうのは、ある種の新興宗教や催眠術にハマるのと同じ。

よって、患者自身も最低限の知識と常識的な判断をもって、専門家である医師の診断を仰ぐのが正しい在り方なのである。

 

とはいえ、わたしの主治医は柔軟性のある勤勉かつ真摯な人間なので、彼から教わることは多い。今回の点鼻薬しかり、新たな知恵を与えてもらった野生児は、点鼻薬を片手にさらなるパワーアップを誓うのであった。

 

 

・・で、いったい何のはなし?

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です