決して大きな声では言えないが、わたしはいま黙々と菓子を頬張っている——いやいや、一人暮らしなのだから黙って食べるのが当たり前ではあるが、それとは少し状況が異なる。
じつは昨日、ピアノ発表会にてたくさんの友人から食べ物を与えてもらったわたしは、すっかり悦に入っていた。それは「演奏が上手くいったから」とかではなく、「たくさんのご褒美に囲まれて幸せな気分に浸っていた」という意味である。
いとも簡単に餌付けをされるわたしは、発表会で大トリを務めるという調子に乗った演出を武器に、多くの友人・知人らを会場へと招集した。そして、気のいい彼ら彼女らはゴールデンウィークの真っただ中にもかかわらず、都合をつけて駆けつけてくれたのだ。
もちろん、着の身着のままフラッと来てもらえればいいのだが、そこは社会性および財力のあるオトナの威厳として、なんらかの手土産を持参する者が多い——断じて、そこを見込んでの召集ではなかったが、結果としてそうなる未来は予測できていた。
しかも多くの者が「あいつは花より団子だろう」ということで、ありがたいことに食べ物・・中でもスイーツや抹茶菓子をこぞって持ってきてくれたのだ。
それにしても「世の中には、美味そうな食べ物がこんなにもあるのか」と感心してしまうほど、いずれもかぶることのないご馳走が続々と手元に届く。どんどん届くので、どんどん受け取って大きな紙袋へ詰める——その結果、仕舞いにはどれが誰からの献上品か分からなくなってしまったのだ。
そして全ての財宝を持ち帰ったわたしは、まばゆい光を放つそれらお宝を片っ端から開封して貪り食った。とりあえず要冷蔵や賞味期限が近いものから着手したのだが、驚くべきことにどれもこれもことごとく美味いではないか!!
(どこのどなたからの贈り物かは存じませんが、誠においしゅうございます・・)
そう心の中で唱えながら、黙々と食べ続けたのである——ということで今に至るわけだ。
振り返ってみると、名だたる名店の菓子がズラリと並ぶなか、「主」の名前でも書いてあればまだしもそういった情報もない状況下において、唯一の手がかりは「食べ物が持つ特徴」だけ。そして、奇しくもわたしの記憶に残っていたのは・・コンビニで買ったであろう、サラダチキンバーと「ダース」のホワイトチョコだった。
「手ぶらで来るのもアレだと思って、こんなものですみません」
そう言いながら、体育会系の後輩からコンビニの袋ごと渡された中身は、トロピカーナのマルチビタミン(ドリンク)とダースのホワイトチョコだった。たしかに、来場者がドレスコードを気にしてそれなりのおめかしをするなど、音楽を堪能するべく非日常的な気分でやって来る者がほとんど・・という中で、「手ぶらよりマシだろう」とコンビニの袋を下げてやってきた後輩は、紛れもなく気が利くし逆にインパクトが強かった。
さらにもう一人の後輩も、「URABEさんならこれかな、と思って」と言いながら、サラダチキンバーを3本手渡してきた——そういうイメージなのか、わたしって。
そんなわけで、この「コンビニ・コンビ」は確実に記憶に残っていたのだが、いかんせん残りが怪しい。
しかしながら、ここでも一人「主張」をする菓子があった。それは、松戸市を代表するピーナッツサブレーの老舗「とみい」の菓子の詰め合わせだ。これは、かつて「とみい」でアルバイトをしていた後輩に違いない——そう確信したわたしは、当人へメッセージを送ったところ「ぴんぽーん!」と返信があった。
(やっぱりね・・笑)
さらに、「こんな金属製の打楽器をもらったところで、いつ打ち鳴らせばいいんだ!?」というくらい、太鼓ばりに大きな四角いアルミ缶の中身は——福岡の名産品であるせんべいの詰め合わせだった。あぁ、これは福岡が地元の奴からだ。
(ちなみに、補足情報として「福岡県民は一人ひと箱、この”銀の缶”を持っている。子どもはおもちゃ箱として、母親は海苔や茶葉の保管に、父親は植木鉢に、そして老人は薬箱として使用している」のだそう——田中調べ。)
このように、地方の名産品だとそれを元に「主」へとたどり着くことができるが、それより何より確実な手がかりとなるのは、「手作りの食べ物」である。
今回、唯一の手作りスイーツとなったのは、射撃の先輩による「自家製巨大プリン」だった。当然ながら真っ先に手を付けた代物であり、圧巻の美味さと感動を味わうことができたわけだが、なんせわたしの胃袋に入るまでの”手間”がすごいのだ。
まずは、発表会前日の夕方からプリン製造に着手。生地にできた気泡をバーナーで消した後に、オーブンで6時間ほど低温(130℃)にて蒸し焼きをする。それを氷で締めた後に、さらに冷蔵庫で12時間寝かせる。そして当日の昼、キャラメリゼしたものをすぐさま密閉し、衝撃と温度管理に細心の注意を払いつつ会場まで自身の車で運ぶ・・という、恐るべきプロ根性かつ徹底っぷりなのだ——そりゃ、美味くないはずがないわ。
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というわけで、わたしに食べ物を与えてくれた皆さん、どうか自首してください。どれもこれも美味かったので、ぜひとも感謝と感想を伝えたいのであります。











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