高級ステーキの手前にある障壁

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一般的な女子よりも足が大きいわたしは、靴に悩まされることが多い。

つま先からかかとまでの「縦の長さ」もあるが、親指から小指までの「幅」もかなりあり、加えて、足の甲の「厚み」も十分にあるうえに「外反母趾」のおまけ付き。

 

女の足として最悪な特徴を兼ね備えているため、日本製の靴が合わないことは当然ながら、外国製であってもなかなかフィットするものが見つからない。

よって、ヒールはいうまでもなく、かかとのある普通の靴ですら合わないのだ。あのモコモコの毛で有名なUGGですら、圧迫感により履き続けることができないという残念さ。

 

そんなわたしのお気に入りは、ビルケンシュトックKEENである。これらの商品の優れた点は、かかとが存在しないことだ。

 

さらに今年の夏は、テリックのリカバリーサンダルが大活躍だった。

「リカバリーサンダル」という名前に惹かれて購入したのだが、これが想像以上に優れもの。秋冬シーズンも履き続けたいくらい、足の裏も膝も腰もまったく疲れないから驚きである。

 

ちなみに、わたしは履き物を選ぶにあたり「歩きやすさ」と同時に「腰への負担軽減」を優先している。

 

当たり前だが、人間の歩行を支える足の裏は、時と場合によっては過酷な状況を強いられる。そして足の裏と地面との間で、唯一、クッションとなって体重を支えてくれるのが履き物。

既製品の靴やブーツ、サンダルのサイズは、およそ0.5センチ刻みで展開している。だが我々の顔や体つきが異なるように、足の形状も人によってさまざまな差異がある。

そのため、自分の足にフィットする一足と出会えたならば、そんなラッキーなことはない。

 

しかしわたしは、そんな僅かな確率よりも絶対的な確実をとるべく、「窮屈な思いをしない形状、かつ、インソールが役割を果たす履き物」を選んだ結果、かかとが省略されて足の甲や指にゆとりのある「サンダル」を愛用することとなったのだ。

 

若かりし頃は、それこそハイヒールのパンプスやミュールでこれ見よがしに闊歩していたが、あんなものを履いていたら、事故や災害などの緊急事態時に逃げ遅れる。

かつ、外反母趾にも悪影響だしマメや靴擦れも絶えないことからも、「生きるために必要な履き物」にシフトチェンジした、というわけだ。

 

おかげでここ数年、足のトラブルに悩まされたことはない。しかも今年出会ったリカバリーサンダルは、長時間立ったり歩いたりしても腰への負担を感じず、まさに「奇跡のサンダル」と呼んでも過言ではない。

例えるならば、初めて「テンピュール」の枕や座布団を使ったときの感動を、まさかのビーチサンダルでも味わうことができた、という感じ。

 

こうしてわたしは、2本の逞しい足で地面を踏みしめ、倒れることなく今日まで生き抜いてきたのである。

 

 

「スマートカジュアルって、わかる?」

 

金持ちの友人からメッセージが届いた。

 

(・・新型ETCレーンの呼び名か?)

 

正直に「わからない」と答えると、

 

「そうか。高級ステーキを食いに連れていってやろうかと思ったが」

 

と、早々に切り上げようとするではないか。そこで慌ててネット検索したところ、

「フォーマルとカジュアルの中間の服装」

「きちんとした印象でありながら、堅苦しすぎない格好」

「フォーマル服よりカジュアルで、普段着よりもきちんと感のあるスタイル」

などなど、どれも曖昧な定義だがドレスコードの一つであることが分かった。ところが最終的には、

「スマートカジュアルは自由度が高い分、センスが必要」

などと書かれており、これではいったい何がスマートカジュアルに該当するのか、皆目見当がつかない。

 

だがどうやら「履き物」だけはどのサイトも一致していた。ヒールの有無にかかわらず、かかとのある靴がマストのようだ。

我が家でかかとのある靴といえば、冠婚葬祭時に履くヒールしか思い浮かばない。しかも結婚式用のヒールはつま先が尖がっているため、足の肉がはみ出て苦痛を強いられる拷問アイテムである。

 

(あの靴では、高級ステーキを味わうどころの話ではないぞ・・・)

 

どうして「ドレスコード」などという表面上の差別を強要するのだ?

純粋に食事を楽しむにあたり、そこまで身なりが重要なのか?

そもそも人はなぜ、見た目にこだわるのだろうか?

 

健康で安全に生きるためにも、リカバリーサンダルを履く意味はある。つま先の尖った華奢なヒールなんかより、足のためにも体のためにも価値があるのは言うまでもない。

 

・・などと主張したところで、高級ステーキ店は聞く耳を持たない。それでも肉にありつきたいわたしは、必死に「かかとのある靴」を探すのであった。

 

サムネイル by 希鳳

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