今日は暑い。よって、水分補給に余念がない。
しかしわたしは、ペットボトルやボトル缶との相性が悪いらしい。
いや、容器との相性というより「内容物の祟(たた)り」とでも言おうか。
*
最初の悲劇はボトル缶コーヒーだった。
最近はプルタブの缶コーヒーに代わり、飲み口の広いスチールやアルミのボトル缶コーヒーが増えている。
プルタブは飲み切らなくてはならないが、キャップ式ならば後で飲むことが可能で便利。
さらに飲み口が広いことで、コーヒーの芳醇な香りを楽しむことができる。
とはいうものの、そもそも缶コーヒーが好きではないわたし。
だが人からもらったものを飲まないわけにはいかず、渋々キャップをねじ開ける。
プシュッ
これはコーヒーを酸化させないために充填してある、加圧した窒素ガスが解放された音だ。
さすがに、缶をカシャカシャ振って吹きこぼすようなドジな真似はしない。
とりあえず飲み口を顔に近づけ、コーヒーの香りを確かめる。
(うん、缶コーヒーの匂いだ)
まぁ所詮、缶コーヒーだからな。
そしてゆっくりと缶をくちびるに当てながら傾ける。
なかなかコーヒーが流れ込んでこない。
もう少し傾斜を急にする。
ドボッ!!
ほぼ口の中へ入ったが、飲み口が広いせいで口の両端からコーヒーがこぼれた。
ーーシマッタ!
なんと今日、わたしは白いTシャツを着ているではないか!
慌ててアゴに手を当てるが、時すでに遅し。真っ黒いコーヒーはアゴを伝って、胸のあたりにポタポタとこぼれた。
ーー最悪だ!!
すぐさまおしぼりでトントンするが、さすがにコーヒーは黒い。若干薄まったところで、明らかにコーヒーをこぼした痕跡が残っている。
こんなことなら、飲み口の狭いプルタブ式の缶コーヒーでよかった。
こんなリスクを負ってまで、なんで好きでもない缶コーヒーを飲まなきゃならないんだ。
クソッ!
*
2回目の悲劇はペットボトルのほうじ茶だった。
「もう二度と缶コーヒーなど飲むか!」と心に誓いながら、お口直しに冷たい飲み物を買いにコンビニへ立ち寄る。
梅雨の底力でジメジメしているが、気温は高いので喉が乾く。
飲み物を物色するうちに、キンキンに冷えたほうじ茶に目が留まった。
(お茶はあまり飲まないが、試しにほうじ茶にしてみよう)
抹茶好きのわたしだが、お茶系が好きなわけではない。抹茶が好きなだけで、むしろ飲み物としてはカルピスやヤクルトなどの乳製品が好み。
しかしこうも暑いと「乳製品!」という気分にはならない。ここはサラッとお茶系だろう。
コンビニを出ると早速、キャップをひねって口へと押し当てる。
そして冷たいほうじ茶をグビグビ飲み干す途中、
ブシャッ!!
歩きながら飲んでいたせいで、ほうじ茶が逆流した。そしてペットボトルから出てくるほうじ茶と、中へ向かっていくほうじ茶とがぶつかり、わたしの鼻の穴と鼻の下(人中:じんちゅう)へと浴びせかかった。
結構な量のほうじ茶が顔面にぶちまかれ、鼻やアゴからボタボタと滴り落ちる。
当然ながら、茶色いほうじ茶が白いTシャツに吸収されていく。
もはや、拭き取る気力も起きなかった。
今日はきっとこういう日なのだろう。いや、もしかするとわたしは、ほうじ茶との相性が悪いのかもしれないーー。
そうか!「水」を選んでいれば、仮にこぼしても人畜無害なわけで、よりによって色の付いたお茶などを選んだのが諸悪の根源。
わたしは試合や旅行の際、飲み物は必ず「水」を選んでいる。
その理由として、もし足にアイスをこぼしたとしても水があれば洗い流せる。揚げ物をつまんで指先が油まみれになっても、水があればすすぐことができる。
コンタクトに異物が付いて目が開けられないような時、水でチャチャッと流したりもできる。
ーーこれは、水を選ばなかった罰だ。
おニューの白Tシャツを葬ったことで、わたしは水の重要さを改めて学んだ。
Illustrated by 希鳳
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