砂丘を歩いたことのある者は、どのくらいいるだろうか。しかも、本物の砂漠の中にそびえる砂丘を、無謀にもビーチサンダルで登った経験のある者はいるだろうか。
わたしは今日、自然が織りなす恐怖のエリア——砂漠——に鎮座する、死の象徴といっても過言ではない「砂丘」に、恐れ多くもタンクトップに短パンそして足元はビーチサンダルという、舐めた装備で挑んだ。
その結果、「ヒトはこうやって砂丘で死ぬんだ」という体験をさせられた。そう、いくら暑いからといって、軽装で砂丘に登るのはバカである。しかも、裸足でビーチサンダルというのは、おそらく自ら死にに行くようなもの。
そんなリアルな臨死体験を、ネバダの砂漠で味わわせてもらったのである。
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先に断言しておくが、砂漠地帯の砂丘において、素足が露出した状態で歩くのは絶対にやってはならない。
そんなことは知っている・・と鼻で笑ったそこのオマエ、裸足でビーチサンダルという軽装備で灼熱の砂を踏み荒らした者にしか分からない、リアルな「ヤバイ」を体験したこともないくせに、知識だけで知ったような気分になってもらっては困る。
似たようなところで、海辺の砂浜でも同様な暑さと歩きにくさは体験できるが、砂漠地帯の砂丘はとんでもない危険性を秘めていることをはっきりと伝えておこう。
まず、海辺の砂浜は表面温度が50~60℃になるため、裸足では熱くて歩けないのは当然のこと。だが、砂を少し掘ると湿った冷たい砂の層が現れるため、足を潜らせれば熱さを凌ぐことができる。
対する砂漠地帯の砂丘は、年間を通じて極度に乾燥していることから、砂の表面どころか奥までカラッカラに干からびており、その温度は70℃以上——すなわち、目玉焼きが焼ける温度に達している。
さらに、どれだけ掘っても温度は変わらないため、踏み込めば踏み込むほど火傷や水ぶくれを負うという、最悪のループが待ち構えているのだ。
おまけに、浜辺の砂は海の波や川の流れによって運ばれてくるので、一粒一粒が比較的大きくて重みがある。また、わずかに湿気を含んでいるため、足の裏で踏みしめた時にある程度ギュッと固まることで、そこそこ歩けるのが特徴。
それに比べて砂漠地帯の砂は、何万年もの長きにわたり、水を通さず風により削られたり擦れあってきたりした結果、角が完全に丸くなり小麦粉のように細かくてサラサラな形状となっていった。そのため、一歩踏み出すごとに足首までズブズブと沈み込み、想像以上に体力を消耗させられるのだ。
そして最も恐ろしい違いとして、そこに住んでいる「生き物の危険度」が桁違いなのである。
浜辺のリスクといえば、貝殻や漂着物の破片で足を切る程度のもので、即刻命に係わる生物は稀。ところが砂漠は、砂の中にサソリやガラガラヘビといった有毒生物が潜んでおり、それらを踏みつけでもしたら素足に噛みつかれて命を落とす危険性も——。
このように、とてつもないリスクをはらんだ恐怖のデスエリアに、あろうことか無謀にも裸足にビーチサンダルという「殺してください」スタイルで挑んだわたし。
素人ゆえに、頂上めざして最短経路である斜面を登っていったところ、とんでもない熱さの砂がサンダルと素足の間に流れ込み、火傷をしそうになったので慌てて足を振って砂を払うも、次の一歩でまた火傷まがいの熱さに見舞われ、さらに慌てて足を振って砂を払うも、今度は逆足が火傷をしかけてバランスを崩し、思わず転倒したはいいがタンクトップに短パンという肌の露出により、まさかの全身火傷に見舞われそうになる・・という、まるでギャグのような事態に陥った。
しかもなにが恐ろしいかって、どこにも逃げ場がないということだ。熱いからどこかへ避難しよう——いやいや、どこへ?!
見渡す限り灼熱の砂地獄、日差しを遮るものも素足の火傷を阻止するものも、何もないしどこにもない。要するに「詰み」なのだ。
その時わたしは思った。
「あぁ、これは死ぬわ。砂漠の恐ろしさは、夜の寒さでなく灼熱の砂地獄のほうが先に襲ってくるんだ」
とはいえ、転んでもただでは起きないのがこのわたし。半狂乱で頂上付近へ登ると、砂丘の尾根というか稜線(ナイフの刃のように尖った、山頂と山頂をつなぐ筋)へと転がり込んだ。
なんと、この細くて尖った筋のような小道は、砂が硬くて歩きやすいではないか。
理屈としては、強い風が吹き付ける尾根は風の圧力を日々受け続けることで、砂粒同士が隙間なく噛み合い、コンクリートのように引き締まった硬い床ができるから・・だそう。
さらに、斜面を歩くと足の重みで雪崩が起こり、砂が崩れて足が沈んでしまうが、尾根付近はヒトの体重を垂直に受け止めることができるため、砂が左右に逃げにくい構造となり足元は崩れにくくなる。
そんな科学的な理屈(?)を知らずとも、野性的な勘により「生き残る術」を嗅ぎつけたわたしは、尾根を伝ってサバイブすることに成功したのである。
(あぁ、素足にビーチサンダルで砂丘を踏破など、自然への不敬ともとれる暴挙である。もう二度とやるものか・・)
そもそも、砂漠地帯の砂丘を訪れることなどそうあるものではないが、とりあえず二度と舐めた真似を繰り返さぬよう、自戒の念を込めてこのコラムを綴るのであった。










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