馬のエサと花嫁修業

 

これはもはや「都市伝説」といっても過言ではだろう。

スパルタなダイエットを開始して二カ月が経過したというのに、わたしの体重は1キロも変わらないどころか、たまに1キロ増えていることも——。

 

こんなバカげた現実が「普通」であるはずもない。「奇跡」か「都市伝説」の類でなければ、とてもじゃないが受け入れらない。

 

 

食事管理アプリ「あすけん」を使って、どんな些細な飲食物でも随時記録しているわたしは、断じてズルなどしていない。よく「実際の摂取量より少なく記録するのが、ヒトの常」などと揶揄されるが、購入した商品のバーコードを読み込むことで自動的に記録される(ものもある)ので、これに関しては「おそらく、過少申告はしていない」といえる。

そして、一日1300キロカロリー(200キロカロリーの増減は範囲内)というひもじい食生活を二カ月も続けてきたというのに、むしろ見事な「横一直線の体重グラフ」が出来上がっているのだから、現状維持という”完璧なカロリーコントロール”を証明したわけだ。

 

しかしながら、仮にこのカロリー数値が過少申告だったとしても、さすがに500キロカロリーもサバを読むのは至難の業。それゆえ、どう多く見積もっても2000キロカロリーを超えることはない。

ちなみに、仮に2000キロカロリーを超えていたとしても、以前の食生活と比較すれば半分以下の数値であり、単純計算として「10キロの重りを5キロに減らしたら、その分は軽くなるはず」と考えるのはいたって普通だろう。

そうでなくても、日々の消費カロリーは2000を超えているはずなので、諸々の理屈やエビデンスをもってしても、わたしの体重が微減すらしないことへの説明がつかないのである。

 

だが、とある友人が呟いたこの一言に、わたしは核心を突かれた気がした。それは、

 

「馬のエサみたいな食事っていうか・・馬が食べる量じゃん、それ」

 

というものだった。

この発言を聞いた瞬間、わたしは脳天を稲妻で貫かれたかのような衝撃を受け、思わず「なるほど!!」と膝を打ってしまった。言われてみればたしかに、食べている食材は馬のエサだが、食べている「量」も馬並みだったのだ。

 

いかんせん、カロリーを抑えつつ満腹を維持しなければならないため、必然的に野菜が多めの食事となるのだが、包丁やまな板が存在しない我が家において、調理をするというのはすなわち食材をレンジへぶち込むことを意味する。

よって、低カロリーかつ腹いっぱい・・という、二つのわがままを同時に叶えてくれる「幻のレシピ」こそが、わたしの自信作である「馬のエサ」なのだ。

 

用意するものは、食材と耐熱ボウル(大)、そしてサランラップのみ。そして、耐熱ボウルへ以下の食材を丸ごと詰め込み、ラップでフタをしてレンジで15分から20分加熱すれば出来上がり。

・ニンジン(2本/半分に折って押し込む)

・ジャガイモ(2個/丸ごと押し込む)

・ズッキーニ(2本/適当に追って押し込む)

・ミニトマト(7個/ヘタごと押し込む)

・生シイタケ(3個/石づきが硬すぎる場合は、噛みきってちぎる)

・ぶなしめじ(パック半分)

・千切りキャベツ(150グラム)

・冷凍カリフラワーライス(150グラム)

※場合によっては(近所のスーパーの品揃え次第で)、春菊やほうれん草といった葉っぱ系をちぎって押し込むこともある

 

そして、しんなりと体積を減らした熱々の馬のエサを、「特製のタレ」にディップしながら食べるのだ。こうすることで、加熱された野菜を冷ますこともできるので、味付けのみならず猫舌にも優しい”一石二鳥の食べ方”となるのである。

そんな「万能タレ」の作り方は、

・納豆(1パック)

・めかぶ(1パック)

・もずく酢(1パック)

・生卵(1個)

 

以上を混ぜ合わせてできたペースト状の「タレ」へ、熱々の「馬のエサ」をディップしつつ、自家製ダイエット料理を満喫するのである。なお、言うまでもなく納豆やめかぶに付属されているタレは破棄しているので、人工的な味付けは一切行っていない点が、わたしの手料理の自慢でもある。

 

この手法により、包丁やピーラーを使うことなく電子レンジ一つで食材を調理できるため、我がダイエット生活もそれなりに順風満帆だったわけだ。

しかしながら、一食でこれだけの量を摂取するとなれば、たしかに「胃袋へ入る量」としては多いかもしれない。加えて、コーヒー(ブラック)を3~4リットル飲んでいることを加味すると、体内に蓄積される水分や物体の重量は無視できない重さともいえる。

おまけに、馬のエサの主成分は食物繊維なので、それらが長時間腸内に留まっているとすれば、摂取量を減らさない限り体重に影響を及ぼすことは想像に難くない——。

 

(だからといって、この食事量を半分にすることは不可能。なんせ、満腹こそがわたしの生き甲斐であり、それを取りあげられたならば死んだも同然。よって、「そこまでして体重を落としたいのか?」と問われれば、さすがに首を縦に振ることはできまい。となると、この二カ月間は料理という技術を身に着けるための、言い換えれば「花嫁修業」の期間だったのか・・)

 

 

なんとなく、体重が微動だにしない原因が分かったのである。

 

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