一筋の光こそが、諸悪の根源だった。

 

当然の結果といえばそれまでだが、わたしのダイエットは「確実に失敗している」といっていいだろう。

そもそも、誰がどう見てもこのままでは病気になるであろうレベルの暴飲暴食を繰り返す日々に、今さらながら生活習慣病の影を感じたわたしは、とりあえずその不安を周囲の者へ伝えることにした。

その結果、誰もが鼻で笑いながら「大丈夫だよ」と答えたのだ。

 

(そりゃそうだ・・所詮は他人事、わたしの健康を心底気にしてくれる者など、いるはずもない)

 

そこでわたしは考えた。

根っからのだらしなさと生来の楽観的な性格を改善するのは難しい——なにが言いたいのかというと、「いつか健康被害を被るのではなかろうか」と思っている、つまり「いつかそうなるかもしれないが、今は健康だし・・まぁいっか!」という舐めた考えの自分に対して、警鐘を鳴らす程度の注意喚起ではビビりもしなければ行動に移すこともない。であれば、嘘でもなんでも「自分はすでに病気である」と宣言することで、周囲も憐れんでくれるだろうし、自身も身が引き締まる思いに駆られるはず——よし、糖尿病を宣言しよう。

 

こうして、昨年末から今年の初めにかけて、「わたしは糖尿病である」という、嘘の既成事実を吹聴したのである。

 

しかしながら、周囲の反応はなんとも素っ気ないものだった。「え・・?! あ、そうなんだ」と一瞬驚きはするものの、その後は「あぁ、いつものアレね」という薄っぺらい信憑性で終わってしまう——。

要するに、日頃の行いの悪さが原因で、オオカミ少年ならぬ嘘つきURABEの言うことなど、誰も信じてくれなかったのだ(まぁ、ある意味でそれが正解なのだが・・)。

 

それでも、糖尿病を意識するようになってからは、血糖値の急上昇を防ぐ食べ物を選んだり、食べる順番を食物繊維からにしたりと、今までしたことのない努力を心がけるようになった。

(千里の道も一歩より。このような小さな努力をコツコツ続けるのが、成功への近道なのである)

 

その後、1月の終わりに下腹部がポッコリ飛び出ていることに気が付いたわたしは、架空の糖尿病を心配する前に「腸や肝臓などの内臓脂肪」に恐れを抱くようになった。

(これほど明らかに下腹が出ているとは、しかもめちゃくちゃ硬いじゃないか。まさかの悪性腫瘍とか・・・)

 

思い立ったが吉日、すぐさま食事管理アプリ「あすけん」をインストールして、一日1,300キロカロリーという超低カロリーの食生活を開始したのである。

 

 

アプリに課金してまで取り組んでいる、人生初の本気ダイエット。にもかかわらず、体重のグラフは開始当初から現在まで見事な一直線を示していた。もちろん、右肩下がりではなく真横へ伸びる一本棒。

よく「ダイエットに停滞期はつきもの」と聞くが、最初から停滞期にぶち当たるのも珍しいだろう。おまけに、二カ月経った今も停滞期まっしぐらなのだから、何がどうなっているのか理解に苦しむ。

 

なお、わたしは日々1,300㎉程度のカロリーコントロールを続けている。多くてもプラス200㎉くらいに収めており、二カ月前までの暴飲暴食を振り返ると、とてもじゃないが信じられない質素な食生活といえる。

なんせ当時は、一日平均4,500㎉・・多いときなど6,000㎉も摂取していたため、あの頃の一食分が現在の一日分に相当するわけだ。にもかかわらず、なぜ1グラムも体重が減らないんだ——。

 

ちなみに、現代人の食生活のワナは「脂質過多」にある。たとえば、本人的には「健康的なサラダ」を食べているつもりでも、アボカドやゆで卵といった食材に含まれる脂質に加えて、ドレッシングやマヨネーズをかけることで脂質過多となるのだ。

また、バターたっぷりのクッキーや風味豊かなチーズケーキ、さらにはバラエティー豊かなチョコレートなど、わたしの大好物である”洋菓子”の食べ過ぎは、言うまでもなく脂質過多を招くに決まっている。

 

そんなわけで、清水の舞台から飛び降りる覚悟で洋菓子を断ったわたしは、モノクロで干からびたつまらない人生を送ることとなった。

だがある日、脂質制限ダイエットを得意とする友人から「あんこは脂質がゼロだから、甘いものが食べたくなったらオススメだよ」という、微妙なアドバイスをもらったのだ。

——この発言こそが、一筋の光どころか「諸悪の根源」となったのである。

 

あんこ嫌いのわたしだが、とりあえず「虎屋の一口羊羹・抹茶味」を口にしてみたところ・・うん、不味くない。その後も、様々な味の羊羹を試してみたが、どれも「美味い」とは思わないまでも食べられないことはなかった。

そして時が過ぎ、気づけばあんこの和菓子が常に手元にある・・という生活習慣が出来上がってていた。なお、最近のお気に入りは「道明寺」と「ずんだ餅」と「きなこおはぎ」だが、もち米好きであることも後押しして、駅構内でこれらのポップアップストアを見かけると必ず購入するようになってしまった。

 

幼少期から今まで、徹底して「あんこ廃絶!!」を訴えかけてきたにもかかわらず、ここへきてまさかの和解をするとは想像だにしない。その結果、日本が誇る「あんこの和菓子」を食べられるようになったことで、食べ物のレパートリーが圧倒的に増えてしまったのだ。

一応、カロリーコントロールというかレコーディングダイエットは継続中ではあるが、「(道明寺を)もう一つだけ・・」「(大した大きさじゃないから)食後に一口羊羹を・・」などとやっているうちに、アプリの女性キャラから「今日の採点は23点です、全然ダメですね」と愛想をつかされる始末。

 

ちなみに、じつはもう一つ「体重が減らない原因」に思い当たる節はあるのだが、それはまた別の機会に触れるとしよう。

とにもかくにも、あんこという和菓子を許容したことで、我がダイエットは失敗の一途をたどっているのである。そしてこの先、ダイエットが実を結ぶ日は来ないのではないか・・と、ダイエット失敗を確信するわたしなのであった。