Two Dots

 

(あれは、見たと言っていいのだろうか・・・)

遥か彼方の丘の上で、目を凝らさなければ視認できないほど小さな黒い粒が二つ、あれがかの有名なアメリカバイソンなのだろうか。もの凄く大きくて、この地域のシンボルでもあるバッファローが、あんな黒い点でいいのだろうか。

そしてわたしは、これをもって「バッファローを見た」と言えるのだろうか——。

 

 

ユタにあるザイオン国立公園近くの道沿いに、広大な敷地の牧場がある。そこで、数等のバッファローを飼育しているという情報を得たわたしは、とくに興味があるわけではないがとりあえずバッファローを見学しに向かった。

途中、いくつかの牧場でカウ(家畜の牛)を見かけたが、どれも穏やかで可愛らしい個体ばかりで、見る者の心を癒してくれる。牛って、なんでこんなに穏やかな気持ちになれるんだろう。

 

そんな安らぎに心を委ねつつ、わたしはまだ見ぬバッファローに期待を寄せた。

バッファローは正式には「アメリカバイソン」という種類で、北米最大の哺乳類として知られている。肩には大きなコブがあり、巨大な頭に湾曲した立派な角という圧倒的に強そうな風貌が特徴。

しかも、体重900キロを超える巨漢であるにもかかわらず、時速60キロというスピードで走ることができるため、仮に突進されでもすれば、コンパクトカーに跳ねられたくらいの衝撃を喰らうことになる。

 

加えて、アメリカバイソンは米国の歴史と文化を象徴する動物であり、不屈さと力強さを表す存在として、2016年に「National Mammal(米国を象徴する哺乳類)」に指定されている。

そんな偉大かつシンボル的な存在のバッファローを、一目拝もうと当該牧場へやってきたわけだが、残念ながらバッファローは不在だった。夕方に近い時間帯だったせいもあり、もうみんな寝床へ引き上げてしまったのか——。

 

「ほら、あそこにいるよ!」

とその時、友人がスマホの画面を見せてきた。そこには、超ズームされた丘陵が写っており、頂上には二つの黒い影が。

「拡大しないと分からないけど、これバッファローだよ」

(・・・ほんとか?)

友人を違うわけではないが、果たしてその黒い影がかの有名なバッファローであるかどうか、わたしには判別できない。むしろ、飼料の山かなにかにも見えなくないし、バッファローであることのほうが疑わしい。

 

するとその直後に、友人のパートナーが全く同じことを叫んだのだ。

「見て!あそこに2頭のバッファローがいるよ」

今まさに友人と話していたことと同様の内容を、その彼氏までもが主張するのだから、素人かつ日本人のわたしがそれを否定するのは、逆に不自然というもの。

仮にそれが、どう見ても二つの黒い点であったとしても、あれこそが米国の象徴たるバッファロー(アメリカバイソン)だと認めなければならない——いや、信じなければなるまい。

 

(そう、あの黒い点は米国哺乳類の象徴たるアメリカバイソンだ。わたしは見た・・見たといっていいのだ!!)

 

視認できる範囲には、「黒い牛」というカテゴリーでは同じといえるカウたちが、モグモグと草を食べながらくつろいでいる。

おそらく、雄々しいバッファローには持ち得ない平穏な雰囲気を醸し出す彼らを眺めつつ、目を細めなければ分からないほど遥か彼方にある黒い点を、ジッと見つめるわたしなのであった。

 

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