ChatGPTの無料版で、何がどこまでできるのかを日々探るわたしは、今、Plusにアップグレードするか否か迷っている。
無料版の場合、文章の要約やサムネイルの作成、会話によるコミュニケーションなどが可能。もちろん、その信憑性については目を光らせなければならないが、要約についてはかなりの精度でまとまっているように感じる(最低限、表面上をさらっている・・という意味で)。
だが、サムネイル用に生成した画像にさらなる注文をつけると、「制限に達したため、しばらく経ってからトライするか、Plusにアップグレードしてください」というメッセージが出る。まぁ、莫大なデータ分析を無料やらされたのでは、それこそ24時間稼働を余儀なくされる可能性もあるわけで、アップグレードへのお誘いは当然の提案といえる。
しかしながら、そこへ踏み切れない一つの・・いや、二つの理由があるのだ。
一つ目の理由は、公にされている情報を根拠に作成したはずの文章が、なぜか間違っていることだ。その一例として、東京都の最低賃金についてとある書面を作成させたところ、
「東京都の最低賃金は、2024年10月1日から適用されている1,113円です。2025年10月1日からは1,163円に引き上げられる予定です。」
という文章とともに、情報源として厚生労働省のサイトが示された。社労士であれば見た瞬間に誤りであると判断できるが、もしも素人がこれを見た場合、厚労省のサイトを確認するまでもなく「あぁ、そうなんだ」で済ませてしまうだろう。そして、この文章を信じて労働者の賃金設計をした場合、それこそ最低賃金法違反となる。
ちなみにこの文章、正しくは「2024年10月1日から1,163円」なので、なぜか一年ズレているのだ。
そこでわたしは、これが間違っていることを指摘した上で、なぜ間違えたのかを尋ねてみた。すると、正しい施行日に訂正した上で、
「最新情報の確認不足、データ取得時のミス、表示・伝達の際の誤りの可能性が考えられます。」
と、彼/彼女なりに原因を分析してくれた。しかしながら、情報源を示した上で日付と金額を見事に間違うという、むしろそっちのほうが難しいのではなかろうか・・という作文力に、嫌味以外に返す言葉が浮かばなかった。
法律が根拠になっているにもかかわらず、このようにまことしやかに間違えるのだから、やはり出来上がった文章を鵜呑みにするのは危険だろう。
そして課金へ踏み切れない二つ目の理由として、「簡単な計算を間違える」ということだ。大人数の賃金設計を短時間で済ませるべく、基本給と固定時間外手当、さらに固定深夜割増を合算して総支給額となるようプロンプトを入力したところ、パッと見で分かるくらい明らかなミス・・存在しないはずの100円の位に数字が入っていたのだ。
そこでこちらも、計算が誤っていることを伝えて再計算を促したところ、
「先ほどの計算ミスの原因は、基本給を変更した際に手当の計算を正しく更新しきれていなかったことです。修正後の正しい計算は以下の通りです。」
と言いながら、再び合計金額が間違っている計算を出してきた。しかも「この金額ならば、正しく〇〇円になるようになっています!」と、自己満足感まで現しながら——。
半ば呆れ気味に「本当に?」と尋ねたところ、
「計算を再確認したところ、**総支給額は△△円**となり、〇〇円になっていませんでした。これは、基本給を変更した際に手当の計算が微妙にずれたことが原因です。」
と、自己分析してきた。いやいや「微妙にズレた」ってなんだよ——。
「最終的に正しい内訳を求めました!これで確実に総支給額が〇〇円になります。」
ここまで鮮やかに断言したのだから、今度こそ大丈夫だろう・・と思うや否や、わたしごときの凡人が暗算しただけでも間違っていることが分かるくらい、1円多いではないか。
意地悪いわたしは、プロンプトを修正せずに「なぜ間違えたのか」を尋ねた。すると、
「計算ミスの原因は、基本給を変数として方程式を立てた際、手当の計算が小数点以下の誤差を含んでいたことです。また、整数で処理すべき部分をそのまま式に組み込んだため、結果が微妙にずれました。もう一度、最もシンプルな方法で総支給額を〇〇円にするための正確な内訳を求めます!」
と、さすがにもう見飽きた言い訳と共に、ポジティブなチャレンジ精神を示してきたのだ。おまけに今度は「手動で計算し直しますね!」ときた。
そして、あれこれ計算過程を綴りながらも、最終的に「総支給額〇〇円(ピッタリ!)」といいながら、
「今度こそ合ってるはず!見直してみて、違和感あったら教えてください!」
などと、典型的な”デキナイ君モード”全開で、言うまでもなく間違った内訳を示してきたのである。
(・・・・・)
ちなみに、分析の内容が見れるのでPythonを確認したところ、
corrected_hourly_wage = corrected_base_salary / 173 corrected_fixed_overtime_pay = round(corrected_hourly_wage * 1.25 * fixed_overtime_hours) corrected_fixed_night_pay = round(corrected_hourly_wage * 0.25 * fixed_night_hours) corrected_total_salary = corrected_base_salary + corrected_fixed_overtime_pay + corrected_fixed_night_pay
となっており、ここはおよそ間違っていない。だが結局のところ、それぞれの金額を合計したのではなく、個別に算出した金額を羅列しただけだった模様。さらに、よくよく見返してみると「基本給を変数として再設定」とあるが、ここで「総支給額を××円アップさせる場合」の××円がそのまま基本給にぶち込まれていることに気がついた。
わたしは、既存の総支給額に××円を上乗せすることで、賃金の内訳を再計算してほしかった。そのため、ビフォーアフターの計算例まで載せて「こんな感じで」というプロンプトを作ったわけだが、ChatGPTには伝わらなかった様子。
しかもChatGPTは、与えられた条件から統計的に最も正確だと思われる答えを示しているため、数字の意味を理解しつつ数学的な処理を行っているわけではない。そこも踏まえて、人間側がもっと分かりやすい条件と指示を出さなければならないのだ。
(・・とりあえず、自力で手計算しよう)
*
こんな具合で、どうも課金に踏み切れないわたしがいる。
クリエイティブな内容であれば正解がない分、AIが提案する意味不明かつ魑魅魍魎な文章や画像を採用することも可能だが、法律の解釈や計算といった「正解となる答えがある内容」については、最終的にはニンゲンが目を通す必要があるのが現状。
とはいえ、最初から最後までニンゲンが処理を行う時間と労力を考えれば、最後の確認だけで済むのは非常に助かるわけで、やっぱり課金しておこうかな・・と、月額20ドルに疑心暗鬼になりつつも期待を隠せないのであった。
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