アラフォーアラフィフ柔術記

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記事を書く材料として、わたしの所属するジムで柔術を習う「アラフォー・アラフィフ」たちにインタビューを試みた。

 

そもそもアラフォー以降から格闘技を始めることについて、その世界に携わったことのない人からすれば不思議で仕方ないだろう。

なぜこの期に及んで率先して痛い思いをするのか。なぜよりによって格闘技なのかーー。

 

「格闘技」と言ってしまうと大げさかもしれない。柔術との向き合い方によっては「格闘技」かもしれないが、大部分の愛好家にとっては「寝技」「関節技」に特化したスポーツという感覚だろう。

とはいえスパーリングの時などは、やはりどこかに勝負師の顔が見え隠れし、表情には現れなくても内心「ぶっ殺してやる」と思っていないとは限らない。

 

そんな「柔術」をなぜ始めたのか、彼ら彼女らの過去の運動歴と合わせて紹介しよう。

 

 

とある女性会員。

「中学のときは科学部でしたよ。ホタルの延命について研究してました」

失礼だが大爆笑。中学生でホタルの延命って、どれだけエライ子どもだったのか。しかも巷の噂どおり、ホタルは甘い汁を飲むと長生きするらしいから驚きだ。

 

「高校になったらギター部で、禁じられた遊びを弾いてましたよ」

またまた大爆笑。そしてなぜそんな憮然とした表情で語るのか。まるで中高友達がいなかった、と宣言しているようではないか。

どちらにしろ、彼女は運動とは無縁の生活を送ってきたらしい。

 

別の女性会員。

「中高帰宅部。運動なんてしたことない」

おぉ、かなりハッキリしている。ただし小学生の頃はフィギュアスケートをかじっていたそうで、親に申し訳ないことをしたと呟いていた。よほど練習をサボったのだろう。

 

また別の女性会員。彼女はお嬢様学校出身で、生け花やお茶、着物の着付けなどが得意。

見るからに激しい運動とは縁遠いタイプなのだが、なぜ柔術を始めたのか。

「きっかけはボディメイクかな。ライザップと迷ってたんだけど、後輩がたまたまこのジムにいたから。男の人とわちゃわちゃするなんて、絶対やだと思ってたよ」

だろうな。可憐な百合の花のようなお嬢様が、オッサン相手にくんずほぐれつなんて、こちらも望んでいない。

 

そして別の女性会員。

「高校のときテニスをちょっと。でも他はなにもしてない」

その後、趣味でダンスを始めた彼女。ダンスの上達のためにも体幹を鍛えようと、ジムを探していた時にここを見つけたのだそう。

背後から男性に声をかけられることが度々あるという彼女、「今ならやれるかもしれない」とニヤリ。

 

さらに男性会員。

「運動なんてしたことないですよ。むしろ中学の時なんか、半分ドカタやってたから学校も通ってないくらいで」

これは意外だ。見た目は超真面目なジェントルマン、中学時代は不良だったのか。いや、ドカタでいい仕事をしていたのかもしれないから、この辺りは追及の余地がある。

 

ちなみにアラセブの男性会員。

「むかーし、少林寺拳法を少々。でもほぼやってないのと同じくらい、何もしてないですね」

我がジム最年長と思われる彼は、好奇心旺盛な医者である。67歳にして柔術を始めるとは実に恐れ入った。

 

このように、アラフォー以降で柔術を始めた人のほとんどが「運動経験なし」という事実も、なかなか興味深い結果といえる。

 

 

マンションのフローリングでゴロゴロ転がることは難しい。だがジムへ来てマットで転がるだけでも、体幹を含む全身のトレーニングができる。

 

わたしが思う柔術の良さは、「トレーニングだと思って取り組んでいない」という点だ。

 

筋トレやボクササイズは「トレーニング」という前提で行うが、柔術は違う。

たとえばテクニックを身につける目的であったり、スパーリングで動き続けるためであったり、その人によって目的や心構えは異なる。

それでも継続するうちに形になり、いつしか一つの方向性が生まれる。

 

これらの変化はフィジカルのみならず、メンタルにも影響を及ぼす。

柔術をやっている人ならば誰もが感じるだろうが、汗をかくことで気持ちがスッキリしたり、新たな課題を見つけて明日が待ち遠しくなったり、まるで高校生の部活を思い出させる。

 

仕事が忙しくてもなんとかやりくりして練習に出かける。

夜通しでテクニック動画をさらいながらイメトレをする。

お気に入りの道着コレクションを眺めながらニヤニヤする。

 

きっと、アラフォー・アラフィフならではの柔術の楽しみ方というものがある。それは勝ち負けだけの楽しさではないはず。

 

とどのつまりは、柔術に関わり続けることこそが「大人の嗜み」といえるのではないだろうか。

 

 

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