ここ最近というか、今年になってから最大の憂鬱でありショックな出来事といえば、「自力で奥歯を折ってしまったため、インプラント治療を受けなければならない」ということだった。
そしてついに、インプラントの土台となる”人工骨の粉末を詰め込む手術”を行う日が来たのである。
インプラント治療が決まってからというもの、生きている気がしない・・とまでは言わないが、生きる気力が半減するほどガッカリしていたわたし。それは、唯一無二の天然歯を失ったというショックもあるが、それよりなにより「インプラント費用がめちゃくちゃ高額」であることに、精神的かつお財布事情的ショックを受けていた。
(67万1千円・・いったいどうやって捻出すればいいんだ)
しかしながら、どれほど悩んだところで選択肢は他にない。無論、ブリッジや入れ歯という方法もあるが、噛む力を必要とされる”奥歯”という部位的に適切とはいえず、健康な歯への負担や手入れの難しさなどからも、インプラント以外はありえない——。
などなど、どれほど悩んだところで非情にも時は刻々と進み、ついにインプラント治療の第一歩である「上あごに骨の土台を作る日」を迎えてしまったのだ。
なぜ土台を作るのかというと、人間の体は賢いため「歯を抜いた=役割を終えた」と判断し、歯の周りにあったあごの骨が自ずと吸収されて縮む。そして、骨が薄くなってしまうと、インプラントのネジを埋め込むことができなくなるため、まずは頑丈な地盤を作る必要があるのだ。
その第一歩として、抜歯した穴へ人工骨の粉末を詰め込むことで、それらを足場として自身の骨を「インプラントが打てる硬い骨」へと再生させるのである。
治療中は麻酔が効いているため痛みは感じないが、精神的な痛み——およそ70万円の借金生活の始まりに恐れ戦きながら、ただただぽかんと口を開いて執刀医に身を・・いや、運命を委ねるわたし。
しばらくのあいだ口の中をごねごねされていたが、いつしか処置が終わり縫合を済ませると、執刀医からまさかの「面白い発言」が飛び出した。
「URABEさん、なんていうか回復力がすごいですね。今、(骨造成の手術を)やりながらも、滲出液がどんどん出てきてもうすでに治そうとしていましたよ笑」
——やはり、そうだったか。
わたしは、怪我の治りが異常に速い。全治三か月ならば一カ月で完治するし、ちょっとした傷は数日でふさがる。さらに、打撲に関しては練習が終わる頃には消えているという、超人的な回復力。
だが、そのことについて証明できずにここまで来たわけだが、本日まさかの「お墨付き」をもらうことに——歯肉を切り裂き人工骨の粉末を詰め込み、上あごの土台を強固なものにする手術の最中、我が自己治癒力および組織再生力は驚異のスピードで活動を開始したのだ。
そして、執刀医はこうも告げた。
「怪我の回復が早いこともそうだけど、カラダ自体がすごく強いんだと思います。だけど、人間の歯というのは硬さが決まっているので、URABEさんの強靭さに歯が耐えきれなかったんでしょうね」
・・そう、わたしのフィジカルに歯が負けてしまったのだ。そのせいで、奥歯を2本失っただけでなく他の歯にも亀裂が入るなど、天然歯が危機的状況にあるというのが現状。
だが、そんな状況を聞いた凡人どもは「無意識に歯ぎしりしてるんじゃない?」とか「歯が弱ってたんだよ」などと、ありきたりな一般論で片付けようとしてきた。しかしながら今日、そうではないことが証明されたのだ。
*
「自分の歯を破折させてしまうのは困るけど、インプラント治療においては『治りが早い』というのはとてもいいことなので・・良かったです」
執刀医からの微妙な誉め言葉で慰められたわたしは、とりあえずインプラントの第一歩を踏み出した。
それと同時に、自己治癒力の高さが証明された記念すべき日となったのである。










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