人間の脳みそは、恐ろしく奇妙で精巧な作りでできている——。
誰がこんな謎のコンピューターを生み出したのか、学者が唱える進化論なんかより「神が作った」とか「異星人が編み出した」といわれるほうがしっくりくる。
なぜ突然こんな話をするかというと、寝ている間に尿意を催すと「なぜかトイレの夢を見る」という経験は誰しもがあると思うが、その際になぜかトイレが壊れていたり、汚すぎてとてもじゃないが使う気になれなかったりで、トレイを使うことができずに困り果てたところ、タイミングよく目が覚める・・という流れが多いことに、ふと疑問を抱いたからだ。
この「なぜ」尽くしの裏には、脳の機能が関係している。
寝ている間に尿が溜まって膀胱が膨らむと、膀胱壁にある感覚受容器が刺激されて、その情報が脳幹を経由して脳へと伝達される。そして、睡眠中も脳は活動しているため「尿が溜まっているから、このままではマズい!」ということを理解する。
だが、成人ならば睡眠中の排尿を抑制する仕組みが働くため、ある程度までは尿道括約筋などによって蓄尿状態が維持される。その一方で、睡眠中の脳・・殊にREM睡眠中は夢を構成する神経活動が続いているため、尿意という内的刺激が夢の内容に取り込まれる可能性が高い。
このような仕組みから、寝ている間に尿意を覚える→膀胱の刺激により脳へ信号が送られる→すぐには覚醒せずに眠った状態を維持→尿意の刺激が夢に反映される→その結果「トイレを探す」や「トイレに行く」といった舞台描写で現れるわけだ。
——この仕組みは理解できる。
では、なぜトイレが使えなかったり汚すぎて近寄れなかったりするのだろう。いい年したオトナがおねしょなど、間違ってもしてはならないという「理性」から、強制的にピンチな状況の夢を見せることで覚醒を促しているのか。
残念なことに、この件については科学的に証明はされていない模様。そもそも、夢について解明することが非常に難しいのだから、当然といえば当然だが。
しかしながら、(成人)がおもらしをしない理由については、脳の仕組みで解決できる。
まず、排尿というのは単に「膀胱がいっぱいになったから出る」という反射ではない。先にも述べたとおり、膀胱の情報は脳へ伝わるため、排尿してもいい状況になるまで脳が排尿反射を抑制し、尿道括約筋を閉じた状態で保つようにできている。
そして、睡眠中もこの「蓄尿モード」は維持されるため、膀胱がかなり充満して覚醒を促すまでは睡眠が保たれる。その裏で、現在進行形の状況が夢に現れる・・というわけだ。
とはいえ、ほぼ100パーセントの確率で「トイレが使えない」夢を見るというのは、排尿を我慢する苦痛や膀胱の圧迫による不快が、夢に現れていると考えるのが自然。そして、「今は排尿してもいい状況ではないから、耐えろ!!」という無意識の指令が、夢の中で反映されるのではなかろうか。
この仮説が正しいかどうかは不明だが、それでも「排尿はトイレでするもの」というルールに則り、布団の上では尿意を催しても耐える!というメカニズムを構築した脳は、すごいとしか言いようがない。
誰がいつどこでそのようなプログラムを作ったのか。やはり、神の仕業か異次元の存在によるものか——。
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そんなことを思いながら、込み上げる尿意に耐えきれなくなり覚醒したわたしは、とにかく漏らしていない現状に安堵しつつ、ゆっくりと身体を起こすとトイレへと向かった。
あぁ、夢の中のトイレが壊れていてよかった。あれがもし、普通に使えるウォシュレット付きの綺麗なトイレだとしたら、今頃どうなっていたのだろうか——。










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