股間を弄(まさぐ)る怪しげなオンナ

 

ジムへ向かう途中、わたしは着替えのパンツを忘れたことに気が付いた。日頃からユニクロの「エアリズムシームレスショーツ」を愛用しており、なんならJR池袋駅構内にあるユニクロで買えばいいか・・と思っていたところ、気づけば有楽町線に乗車していた。

こうして、行きがけにフラッとユニクロへ寄る作戦に失敗したわたしは、だからといって店舗までわざわざ出向く気にはなれなかった。そもそも遅刻ギリギリなわけで、エキナカでサッと買うのですら微妙なのにあえて店舗を訪れるというのはリスクが高すぎる。

こうなったら、コンビニでパンツを買うしかない——というわけで、下着やタオルなど日常衣料品を豊富に取り揃えているファミマへと向かったのである。

 

ファミリーマートはコンビニエンスウェアという独自のアパレルブランドを展開しており、「いい素材、いい技術、いいデザイン。」をコンセプトに、コンビニ衣料を緊急時の代用品から”日常的に選ばれる服”へと進化させた。中でも”ファミマソックス”はSNSで話題となり、累計販売数は数千万足に達する目玉商品となった。

 

というわけでジム近くのファミマへ入店したところ、女性用のパンツ(ショーツ)は一種類のみ置かれてあった——あ、これはダメなやつだ。

じつは昨日、ファミマパンツ愛用者の友人が「今まで履いてたのが消えて、ハイウエストになっちゃった」と、不満を漏らしていたのだ。ちなみに、わたしはハイウエストが嫌い(というか苦手)なため、友人が履いている不思議な形のファミマパンツを眺めつつ、「ファミマはなぜ、そんなにもウエストを長くしたんだろうか・・」と、不信感満載で疑問を抱いたことを思い出す。

無論、友人もハイウエストが気に入らない様子ではあったが、商品展開が一新されてしまったのではしょうがない。「どこかの店舗で、前のシリーズの在庫があったら教えて」と寂し気な表情で告げる姿が、瞼の裏によみがえる——。

 

そんな経緯もあって、この「リラックスショーツ」という名の見た目がダサい・・いや、腹部を守ってくれる形状のパンツを買う気にはなれず、わたしは断腸の思いで「ノーパン敢行」を決意したのだ。

 

練習後、シャワーを浴びたわたしはパンツを履かずにズボンに足を突っ込んだ。それと同時に、今日に限ってはチェックが必要な項目について、何度も厳しく確認をした。それは何かというと、「フロントファスナーが閉まっているかどうか」である。

たまに、フロントファスナーが全開でインナーのシャツやパンツが見えているサラリーマンを見かけるが、もしも今日のわたしがそれをやれば、「恥ずかしい」では済まないくらいの事件になりかねない。

しかも困ったことに、歩いているうちに震動や摩擦によってファスナーが降りてくる現象が稀に起こるため、このズボンでそれが起きたら大惨事。よって、常にファスナーの引き手を持ち上げておく必要があり、引上げないにせよ常に手はファスナー辺りにスタンバイさせておかなければ——万が一のことを考えると、このくらいの警戒はしておくべきだろう。

 

というわけで、常に股間の辺りを手でさわさわしている「怪しげなオンナ」を演じるわたしは、人目も憚らず池袋の繁華街をせっせと歩くのであった。

あぁ、くれぐれもパンツは忘れないようにしなければ——。

 

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