形式上は「屋台船で花見をする・・という、顧問先のイベントに招かれた社労士」だったわけだが、実態としては「蟹工船へ送り込まれた、フードファイター」だったのであろう、このわたし。
翌朝の体重は、(しつこいようだが)ダイエット中であるにもかかわらず3.2キロも増えており、昨夜の”戦い”がどれほど過酷なものであったのかを物語っている——ほらやっぱり、食べた分だけ体重増えるじゃん。
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集合時間に遅れると、乗船場までの遠い道のりを徒歩またはダッシュしなければならないため、地下鉄が止まろうが何しようが「定刻までにたどり着く」というミッションをクリアしたわたしは、「これで今日の仕事は終わりだな」と、内心安堵した。
そして、現地で待ち構えていた蟹工船の監督である宮本(仮名)による、厳格な管理および監視の下で無事に乗船を果たしたのである。
ちなみに、この船のルールは、「制限時間(2時間)内で、いかに大量のもんじゃ焼きを食べられるか」というシンプルなもの。だが実のところ、これには大きな落とし穴があった。
もんじゃ焼きというのは、生地や具材の入ったボウルを渡されて、それを自ら調理することで完成となる。さらに、出来上がったもんじゃを追熟させることで「おこげ」を作り、本体と合わせて味わうのが「もんじゃ焼きの醍醐味」といえる。
要するに、「もんじゃが完成するまでのタイムマネジメント」こそが、重要なカギとなるのだ。
しかしながら、不肖わたし——蟹工船に送り込まれた最底辺労働者たる身分のわたしが、唯一無二の強運というか「当たりを引いた」と確信したのは、本日の監督者である宮本の存在だった。
宮本は、口数こそ多くない物静かな女性だが、この戦いにおける残り時間の把握と、次々に運ばれてくる生地や具材の管理、そして挑戦者であるわたしの完食スピードを把握したうえで、誰に教わるわけでもなく鉄板へ油を引いたり残骸を除去したり、また、調理前後の微妙な火加減を自由自在に操ったりと、この船に乗り込んでいる誰よりも——むしろ、主催者側の人間よりも圧巻のパフォーマンスを後に披露した。
淀みなく動き続ける宮本の手指と視線は、鉄板とわたしの皿とを常に行き来している。おまけに、注文の回数を重ねる毎にもんじゃのクオリティーが上がっているではないか——。
そんな「最強の監督」を対面に据えたわたしは、彼女にすべてを委ねつつ一心不乱にもんじゃと向かい合った。
なお、猫舌のわたしは熱々のもんじゃをダイレクトに口へ放り込めないため、別途用意された「白菜キムチ」でもんじゃを包んで冷ます・・という荒技を駆使し、出来立てほやほやからしんなりおこげまで、ためらうことなくスムーズに平らげる作戦を敢行した。
さらに、もんじゃともんじゃの間をつなぐクッションとして、隣の鉄板で焼きあがったお好み焼きを拝借する・・というチート行為も取り入れたため、一秒たりとも咀嚼を途切れさせることなく、正々堂々と戦いに挑むことができたわけだ。
「ヤバい、あと30分しかない」
迫りくる終了時刻に焦りを隠せないわたしを見て、宮本の眼が鋭く光った。
食欲のリミッターが解除されたわたしは、自らが注文した「麻婆もんじゃ」と「フレンチトースト」の調理が未着手であるにもかかわらず、通路を挟んだ向こう側のテーブルに放置されていた「シュリンプドリア」の生地をこっそり盗んできたため、われわれの鉄板が飽和状態に。
この状況で、残り30分ですべてを片付けなければならないというのは、物理的に考えて無理があるんじゃ——。
しかしながら、敏腕な策士として名を馳せる宮本はあきらめていなかった。
われわれの鉄板を素早く掃除すると、すかさず麻婆もんじゃの具材をばら撒き調理を開始すると同時に、隣の鉄板の半分を使ってフレンチトーストに火を入れる・・という二刀流を披露したのだ。
隣の鉄板については、わたし同様に蟹工船へ送り込まれた挑戦者が担当したが、意外にも彼の手つきはなかなかのものだった。それを察知した宮本は、ダークホースたる彼の様子を横目で観察しつつ、着々と麻婆もんじゃの仕上げに入っていった。
そんな漢気溢れる宮本の期待に応えるべく、わたしは全力で麻婆もんじゃを掻っ込んだ。
(熱かろうが辛かろうが、知ったこっちゃない。監督の・・宮本の信頼を勝ち取ることが、今のわたしに課せられた最大の使命なのだから!!!)
こうして、シュリンプドリアとフレンチトーストを食べ切った直後に、我らを乗せた屋形船は桟橋へと着岸したのである。
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翌朝、我が家の体重計は「昨夜のバトルがいかに過酷で激しいものであったか」を彷彿とさせる数字を示していた——そう、やはり食べれば増えるのだ。
それなのになぜ、この二カ月以上少食を貫いたというのに、わたしの体重は微動だにしなかったのだろうか・・。
永遠に「この謎」は解けないまま、おそらく迷宮入りするものと思われるが、それにしても一晩で3.2キロ増って(黙)。











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