北斗の拳、ノーブラ編

 

悲しい事件・・いや、憤慨すべき事実を目の当たりにしたわたしは、いよいよ焦った。

 

先日、奇しくもブラジャーのサイズがダウンしてしまったわたしは、家中のブラジャー(勝負下着を含む)を廃棄した。サイズの合わない靴を置いておいても飾り物にしかならないのと同じで、着用したところでガパガパのブラジャーなど邪魔以外のなにものでもないからだ。

その後、試しに購入したワンサイズ小さなブラのみが衣装ケースに眠る陣形となったが、とはいえこいつの出番もおそらく来ない。なぜなら、日頃からブラジャーというバスト補正器具を使用しないわたしは、ブラトップ(タンクトップやキャミソールの胸の部分にカップが付いているもの)で過ごしており、よほどの事情がない限りブラなど必要ないわけで。

 

とはいえ、まったくのノーブラで過ごしているわけではなく、一応ちょっとしたパッドがくっ付いているトップスを着ているだけ、マシというか女性としての配慮やプライドはあるだろう。そんなわたしが、まさかのインナーを忘れて柔術の練習へとやって来たのだ。

(しまった・・まぁしょうがない、インナー借りるか)

わざわざ取りに戻るのも面倒だったので、インナーをレンタルすることにしたのだが、我が道場ではスポブラやスパッツ、ラッシュガードといった、ノーギウェアのレンタルをしていないということを、その時初めて知った——ということは、ノーブラ!?

 

もしも日常的にブラジャーを着用していたならば、とりあえずTシャツだけレンタルして練習に参加し、帰りはノーブラで・・という選択ができた。

だが本日も、いつものごとくカップ付きのタンクトップに上着を羽織って家を出たわたしは、もしもこのタンクトップで練習したとなると、帰路の服装は「上半身裸にカーディガン」という、完全なるお縄案件となってしまう。

(ということは・・やっぱりノーブラ!?)

一応、スポブラを持っている可能性のありそうな男性会員に声をかけるも、「んなもん、持ってるわけねーだろ!」と一喝されて終了。やむなくわたしは、ノーブラにて柔術を行う覚悟を決めたのである。

 

不幸中の幸いだったのは、飛んだり走ったりするような運動であれば、さすがにノーブラではいくらバストが平らであっても厳しいものがあるが、柔術は「寝技」と言うだけあってそこまで激しい上下動を必要としない。

しかも、ボトムからの攻撃を選択すれば、それこそ背中をマットに着けた状態となり、申し訳程度のバストなど無いも同然。要するに、柔術に限ってはノーブラでも対応可能なのだ。

 

しかしながら、男性相手ではさすがに向こうも気を使ってしまい、やりにくさを感じるのではなかろうか。それではちょっと、申し訳ない気持ちになるが——。

 

*

 

様々な思いが脳内を巡る中、いっときスパーが始まってしまえばそれはもうノーブラだかスマブラだか分からないほど、なんら普段と遜色のない壮絶なバトルとなった。

 

そしてわたし自身も、「乳が揺れて痛い」といった違和感を覚えたり苦痛を感じることなく、まるで何事もなかったかのようにその日の練習を終えた。おそらくだが、発達した胸筋がパンプアップしたことで張りが出て、余分なたるみはそちらへ引っ張られたのではなかろうか——。

(結局のところ、胸筋が北斗の拳、かつ、バストがサイズダウンしてしまったわたしにとって、スポブラというのは絶対的に必要な存在ではなかった・・ということなのか)

 

普通に柔術ができたことはよかったが、オンナとしては不満が残る結果となり、なんとも複雑な心境なのである。

 

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