ヒトを怒らせるも喜ばせるも、言い方一つで決まるものなんだな・・と、改めて実感させられる文書に出会った。
いわゆる「お役所仕事の典型」ではあるが、作業を機械的に済ませるべく事案の内容や本質を考えずに、ひな形を上書きする形で作成した文書を数万件の企業へ送り付けた結果、電話がパンクするほどのクレームの嵐に見舞われた某年金事務所は、なんとも哀れである。
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「こんな要請?があった記憶はないし、これは本当にやらなきゃいけないことなのでしょうか」
クライアントからとあるPDFが添付されたメールが届いた。さっそく開いてみると、それは某年金事務所長名で発出された「登録依頼(オンライン事業所年金情報サービス)」だった。
これについては、なんら疑問もなければ不信感を抱くこともない。なぜなら、これは日本年金機構が積極的に推し進めているオンライン化の一環で、殊に算定基礎届の手続きが迫るこの時期に、オンラインサービスの登録を促すキャンペーンを行っている(と思われる)からだ。
しかしながら、現状からするとこのサービスは「メリットがよく分からない」という懸念点がある。ペーパレス化のためには必須のアプローチなのだが、社労士に依頼をしている会社にとってはもうすでに電子化された状態であるため、わざわざオンラインサービスに登録する価値が分からない・・というのが実情。
無論、社労士を介さずに自社でGビズのIDを取得済みであれば、簡単にサービス開始手続きができるが、そもそもGビズIDを持っていない事業主はまずはそこからのスタートとなる。
とはいえ、これもそこまで複雑なものではない(と思う)。本人確認のために社長自身のマイナンバーカードを登録すれば、即日または数日以内にIDが発行されるのだが、マイナンバーカードを持っていない場合はオンラインでの登録ができないため、郵送での手続きとなる。
郵送という時点で、会社側からすると「面倒くさい」と感じてしまうわけだが、さらに面倒なのが「法人の印鑑証明が必要」という点である。当然ながら、法人の存在を証明するための資料として、なんらかの証明書類を添付しなければならないが、印鑑証明を取得するためにわざわざ法務局へ出向く手間を考えると、それはもう面倒くささマックスとなり「だったら、わざわざ登録しなくていいや。とくに困っているわけでも不便に感じているわけでもないし・・」ということで、結果的に手続きを放棄するのだ。
そんなこともあり、担当者が個別に存在する企業でない限り、GビズのIDまたは電子証明書の取得というのは気が乗らない作業といえる。
それよりなにより、飛躍的なメリットを感じられないからこそ登録企業数が増えないのだ。現状と比較して、これはやらなきゃ損だ!というくらいのメリットがあれば誰でも動くが、そうでない限りは「別に今のままで困ってないし」というのが大方の意見——確かに、社労士が電子申請している企業にとっては、なんら不便も不都合も感じていないどころか、自らサイトを訪れずとも社労士から自動的に報告がくるため、便利であり失念防止にも役立っているわけで。
というわけで、某年金事務所から届いたオンラインサービス登録の依頼を読んでみたところ、「これはさすがにマズい言い方だろう」という文言に、目が釘付けになってしまった。
「(前略)・・しかしながら、再三勧奨文書により登録を要請している貴事業所におきましては、令和8年3月末時点で未だ登録が確認されておりません。(中略)・・なお、期限までにご登録いただけなかった事業所に対し、今後は文書に加えて訪問による勧奨を行う場合もございますのでご承知おきください。」
いやいやいや・・任意でお願いする立場の者が、このような強い口調で「依頼」するのは、どう考えてもおかしいだろう。それよりなにより、これは社会保険未適用事業所に対する適用勧奨通知のひな形を、そのまま使った文書じゃないか!!
適用勧奨は、本来ならば社会保険に加入しなければならない事業主に対して送付される通知書で、ちょうどこの時期にばら撒かれている模様。そして、いくつかのクライアントから同様の相談を受けたことで、各年金事務所が発出している適用勧奨通知のひな形を収集できたわたしは、その文言が同じであることを発見したのだ。
——おそらく、担当者が新人または素人で書面を作ることに不慣れだったのだろう。だからこそ、少ない手札の中から似たようなひな形を探し出した結果、適用勧奨通知がちょうど良さそうだいうことで、それを用いて上書きしたのだと想像できる。
だが、そもそも書面を作成する以前に「依頼内容についての温度差」を知るべきである。適用勧奨は強制的であるが故に強い口調で促すのだが、オンラインサービスへの登録はあくまで「お願いベース」にもかかわらず、まるで事業主が悪いかのような書き方をされては登録などしてはもらえまい。
ちなみに、この件について当該年金事務所へ電話をしたのだが、どういうことか朝からずっと繋がらす、夕方になってようやく繋がったかと思えば、「(同様の内容で)お叱りの電話が鳴りやまず、後ほど担当者から折り返させていただきます」と、直接の担当ではない者が謝罪しまくる始末——まぁ、そうなるだろうな。
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他人様に何かを頼む際、成功確率を上げたいのならば「ひたすら平身低頭をキープする」を徹底しなければならない。少しでも傲慢な態度や上から目線な感じが出てしまうと、たったそれだけのことで失敗に終わってしまうのが、ニンゲンという生き物の扱いにくいところであり面白いところでもある。
とにかく腰は低く、当たりは柔らかく、なにがあってもめげずにおだて倒すくらいの覚悟で挑まなければ、勝利することのできない勝負がビジネスの世界には存在する。なぜなら、相手は感情に左右される性質を兼ね備えた、「ヒト」という繊細で複雑な生き物なのだから。










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