極太の供物

 

わたしは歓喜した——丸々と太った前腕よりもさらに厚みを帯びた、それでいて歪な曲がり方もしていなければ色がくすんでいるわけでもない、自分史上最大かつ最高の焼き芋を手に入れられたことに。

 

 

多くの友人に餌付けされているわたしは、何かにつけて食べ物をもらう機会に恵まれている。

本来ならば「こちらから頼んだわけでもないのに、事あるごとに食べ物が届くのだ」と言いたいところだが、残念ながらわたしのほうから脅しをかけて供物を強要しているので、純然たる親愛の証とは言い切れない面もある。だがそれでも、食べ物をもらうと嬉しさと同時に相手への忠誠心が増すため、ヒトとはいえ「餌付け」という表現は適切だと思う。

 

そして、食べ物を与えてくれる多くの者は「動物にエサを与える感覚」なのだろう。なぜなら、供物のほとんどが高級ブランド店のものではなく、ちょっとした地域の名産品だったりたまたま見つけた変わり種の菓子だったり——それすなわち、奉納することに意味があるのではなく、供物を美味そうに頬張るわたしを観察するために行っているからだ。

それにしても、ヒトはなぜ動物にエサを与えることで喜びを感じるのだろうか。かく言うわたしも、カピバラに青菜を与えるのが至福の時ではあるが、手ぶらで現れても興味を示さないくせに葉っぱをチラつかせると急にすり寄って来る姿は、彼らの嘘偽りなき行動であり本能に従順で愛らしい。そう、変に可愛らしく媚びを売るのではなく、本能の赴くままに「食べ物をよこせ!」と主張する姿こそが信頼に足る行動なのだ。

 

そんなわけで、餌付けスペシャリストの一人である友人が、わたしを見つけるなり勢いよく白いレジ袋を手渡してきた——ずっしりとした重さと、買って間もないであろう温かさを感じる。

「早く開けてみて!」

まるで、親へ手作りプレゼントを贈った子どものように、キラキラと目を輝かせながら開封を迫る友人。それにしても・・なんだろうこの温もりと柔らかさは。まるで生き物のようなフレッシュな臨場感がある。

 

「うわっ?!なにこのデカいの!!!」

レジ袋の中に沈んでいる茶色の紙袋を開いたわたしは、思わず叫んでしまった。なんとそこには、わたしの前腕よりも太い立派なサツマイモ・・もとい、焼き芋が横たわっていたのだ。

大袈裟な言い方ではなく自分史上最大級のサイズであろうその焼き芋は、500mlのペットボトル飲料よりも太くて重かった。こ、これは・・なんと素晴らしい焼き芋なんだ!!!

 

彼女の地元にあるスーパーで、たまたま見つけたという巨大な焼き芋。それを見た瞬間にわたしを思い出してくれたようだが、じつはこれにはちょっとした理由があった。

今はもう見かけなくなったが、冬のシーズンにファミマのレジ横で強烈なアピールをする商品といえば、言わずもがな焼き芋だ。そしてわたしは、エサが置かれた罠に誘い込まれた野生動物のごとく、焼き芋が並べられた保温ケースの前へフラフラと吸い寄せられるのだが、そこで発見したとある事実があった。

 

それは、店舗によって明らかに「焼き芋のサイズが異なる」ということだ。無論、農作物という自然の恵みに対して「大きさがバラバラだ!」などと文句を言うつもりは毛頭ない。だが、池袋の某店舗の焼き芋はいつ見てもデカくて太くて立派な個体が並んでいるのだ。

「値段が同じならば、少しでも大きな個体を選びたい」と考える、卑しい・・いや、食に対して貪欲なわたしは、最高の焼き芋を求めていくつものファミマをはしごした。だがやはり、某店舗の焼き芋に勝るサイズ感と出会うことはなかった——あの店だけ、特別なルートがあるのだろうか。

そんなわけで、某店舗に陳列されている立派な焼き芋(といっても、わたしの前腕よりは細い)をすべて買い占めるのが、冬のわたしのルーティンとなっていた。

 

そして、わたしのこのルーティンを哀れな目で見守っていたのが、かの友人だった。おそらく「どうにかして、この動物に立派な焼き芋を与えてやりたい」という母性本能(?)に火が点いたのだろう、さすがに冬は過ぎてしまったが、今になってついにその瞬間が訪れた・・というわけだ。

 

ちなみに、スーパーの青果物コーナーでサツマイモを購入しようとすると、それなりに極太の個体と出会うことがある。だが、それを加熱するには時間がかかることと、我が家にある焼き芋製造機(こちらも、友人からの献上品)にはサイズ的に収まらないことからも、なかなかデカい焼き芋にかぶりつく機会というのは訪れない。

だが今回、片手ではおぼつかないほど太くてずっしりとした重みの焼き芋を与えられたわたしは、驚きよりも興奮のあまり歓喜した。商品として販売されている焼き芋で、これほど立派な逸品を手にしたことはない。これぞまさに、キング・オブ・ヤキイモである!!!

 

 

こうして、鼻息荒く焼き芋にむしゃぶりついたわたしは、混雑する山手線車内で奇異な目に晒されつつも、極太の逸品を胃袋へと納めたのであった。