日本国バングラデシュ町一丁目一番地観察記

 

弁当を食べるといったら公園が定番——ということで、友人からもらった”総菜セットとおにぎり”を食べるべく、わたしは池袋の西口公園へと向かった。

それにしても今日日、公園というものが非常に少なくなっている。あったとしても、ブランコとジャングルジムだけの狭い土地であったり、あるいはわざわざ足を運ばなければたどり着かない観光名所であったり、それぞれの良さはあるものの「ちょっと弁当を食べる」目的で利用するには身近とはいえない存在。

そんな中で西口公園は、池袋駅の目の前という利便性に加えて、弁当を食べるに相応しいベンチが設置されているわけで、ここを逃すわけにはいかない。

 

(・・なんだなんだ?!)

敷地内へ踏み入る前から聞こえてくる、賑やかな音楽や歓声に眉をひそめるわたし。そう、日曜日である本日、西口公園でなんらかのイベントが開催されていたのだ。

状況を確認するべく現場へ向かってみると——なんと、ここが日本であることを忘れるほど大勢の南アジア系の人間が集まっていた。インド、パキスタン・・いや、バングラディシュだ。

 

公園付近には、バングラディシュの民族衣装である「サリー」や「サロワカミューズ」といった、カラフルな布やスリーピースの衣装に身を包んだ女性陣と、同じく「ルンギ(スカート状の普段着)」や「パンジャビ(襟のついた長袖のロングシャツ)」を着こなす男性陣、そしてたくさんのベビーカーが所狭しとひしめき合っていた。

とりあえ何が起きているのかを調べてみたところ、これは「ボイシャキメラ(Boishakhi Mela)」——ベンガル語で「正月の祭り」を意味するイベントで、バングラディシュ大使館と豊島区が後援となり今年で25回目を迎える催事の模様。

なお、この祭りでは同時に「カレーフェスティバル」も開催しており、辺りはスパイスの独特な香りが漂っている。

(卵焼きとおにぎりを、カレー系スパイスの匂いをおかずに食べるとするか・・)

 

それよりなにより、「これほど大勢のバングラディシュ人が、都内近郊で暮らしている」という事実に驚かされた。西口公園一帯はアジア系外国人一色に染まっており、むしろ日本人であるわたしが異質な存在に思えるほど。

しかも、男性も女性も皆ガタイがいいのだ。日本人よりも一回り大きなバングラディシュ人たちが一堂に会すると、さすがに威圧感がすごい。コーカソイドの血が濃いのだろうか、イメージ的にはインドやバングラデシュの人々は日本人と同じくらいかやや小柄だと思っていたが、日本に在留するバングラディシュ人のビザ(特定技能の「建設分野」や、若年層を対象とした技能実習生など)の関係なのか、高身長で筋肉質な男性ばかりが目に入る。

そして、カラフルなサリーに身を包む女性らは、その多くがベビーカーを押したり幼児を抱いていたりするわけで、異国の地である日本において家族を授かり新たな生活を始めた「事実」を物語っている。しかもその多くが——少なくともわたしが観察した全員が、同胞同士の婚姻および出産と思われるため、子どもらの出生国は日本かもしれないが、流れる血は日本のものではない。

 

日本にいながらにして、日本人がまったくいない空間に腰を下ろして弁当を食べるわたしは、私服警官がメガホン片手に「歩道をあけてくださーい」と叫びながら巡回する姿を、滑稽に感じながら眺めていた。

言うまでもなく、彼ら彼女らはそんな警告を聞き入れる様子はないし、もしも本気で伝えたいならばベンガル語でなければ意味がないだろう——。

 

 

普段ならば「思うところ」のある中国人や韓国人の観光客らが、今はむしろ可愛らしく見えるという、なんとも不思議な異空間なのであった。

 

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