カピバラという動物との出会いが、いつどこでどのような形だったのかは覚えていないが、少なくとも実際に見たり触ったりしたのは後のことだったので、やはりSNSを通じて知ったのだろう。
なんとっても、あの無表情かつ正面から見ると不機嫌そうな目つきが、わたしの「悪いモノ好きな精神」を掴んで離さなかった。
キャラクターでもなんでもそうだが、いわゆる「悪そうな顔」が好きなわたしは、ふわふわモコモコの”ゆるキャラ”を筆頭に、可愛らしさや愛くるしさを前面に出した”あざといキャラ”が大嫌い。その代わりに、不敵な笑みを浮かべるような”悪だくみキャラ”に惹かれる傾向にある。
さらに「フォルム」も重要で、馬やネコのようにスマートで美しい体型に興味はない。しかしながら、丸っこくて短足でぼてっとした——見た目で言えばブタのようなカタチの動物に愛着が湧くのである。そう、フレンチブルドッグやカピバラが、まさにソレなのだ。
このように、わたし好みのどストライク・・といえる生き物の一つが「カピバラ」なわけだが、その中でも初めての”推し”となったのが、大宮公園小動物園の男性アイドル・ピースだ。
ピースを知るきっかけとなったのは、イマドキっぽいもので「ネットでの出会い」だった。かねてから大宮公園小動物園のカピバラたちを撮影し、YouTubeで配信していた女性(カピバラは世界最大の齧歯類なので、女性の名を「ねず子さん」としよう)がいて、たまたま見つけた彼女のチャンネルがきっかけとなって、ピースの存在を知ったのだ。
三つ子である”ピース兄妹”の内訳は、兄・ピース、妹その1・ラメール、妹その2・チェリーという構成。
ちなみに、一般人からすればカピバラの個体差など分からないのが普通。いかんせん、骨格も毛の色も同じである上にヒトと違って無表情、そして集団で生活する動物ゆえに目立つ個体は存在しないのが大前提だからだ。
だが、ねず子さんはこの三頭の”特徴”を見事にとらえた動画を撮影・投稿しており、カピバラ素人のわたしでもどれが誰なのかを見極めることができた。
とりわけ、ファンサ精神が旺盛でとぼけた態度が印象的なピースが、三頭の中でもっとも判別しやすい上に、なぜか「じっと座っているだけ」でも面白い・・というか、目を引かれる個体だった。
そんな、アイドル的存在のピースにまつわるエピソードはたくさんあるが、まるでコントを見ているかのような「とある行動」を思い出すたびに、彼が持つキャラクターというか人間性のようなものを感じるのであった。
それは、妹その1であるラメールにちょっかいを出す(すり寄ったり、手で背中を押したり)も、そんなウザい行動に興味のないラメールは、ピースからのアピールを完全に無視。だが、よせばいいのにどうしても反応が欲しかったのか、懲りもせずいたずらを続けたピースは、最終的に妹から激ギレされる・・という、まるでニンゲン界の「ウザい奴」を再現しているかのような光景だった。
子ども同士のじゃれ合いや、愛玩動物がヒトに対して見せる仕草であれば理解できるのだが、いい年したオトナのオジサンが妹(オバサン)にちょっかいを出してウザがられる・・というのは、よほど空気が読めない典型といえるだろう。
とはいえ、仲がいいからこその「ウザ絡みからの鬼ギレ」なのだが、まるでニンゲンを彷彿とさせる彼らのコント(?)を見ることができたのは、ねず子さんのYouTubeがあったからだ。
そして今月の頭、3月5日にピースはこの世を去った。
なお、大宮公園小動物園は、大宮スーパー・ボールパーク構想により閉園となる可能性が高いため、今後新たにカピバラが展示される日は来ないだろう。
この、大宮スーパー・ボールパーク構想は「試合がある日もない日も楽しめる公園」というコンセプトの大宮公園再編計画だが、六つの基本的な観点として「自然・景観」「水とみどり」「にぎわい」「公園運営・官民連携」「交流・回遊」「防災」を挙げるのであれば、『動物園の存在意義』についても考えてもらいたい。
動物園が担う役割や内包する価値について、日本動物園水族館協会によると、
(動物園は)、絶滅危惧種の保全や繁殖を通じて生物の多様性を守る拠点であり、種の保存に重要な役割を担う場所といえる。また、来園者が動物を間近に観察することで自然や生命への理解を深め、環境保全意識を育む教育の場でもある。
さらに、動物の生態や行動に関する調査研究を進め、その成果を保全や福祉に還元する機能も持つだけでなく、人々に癒しや楽しみを提供するレクリエーションの場として、社会的・文化的価値も有している。
このように考えており、かくいうわたしも国内に動物園や展示施設がなければ、カピバラを知ることも触ることもなかっただろう。
なによりも、生の動物を間近に見ること、あのなんとも言えない”動物臭”を嗅ぐこと、そして動物に触れたりエサを与えたりすることなどは、日常生活では得ることのできない貴重な体験といえる。
それが叶うのが動物園や水族館であり、そこには理屈では片づけられない必要性がある・・と、わたしは思っている。
おまけに、自宅で愛玩動物を飼育するのとは異なり、自然界で生きる動物たちを本来の姿に近い状態で飼育・展示することは、施設への設備投資や飼育員等の人材教育の観点からも、並大抵の取り組みではないことくらい想像に容易い。
それを、埼玉県の税金で賄うことで無料開放している大宮公園小動物園は、日本が誇る公共施設といえるし、むしろ有料化してもいいから存続を希望したいくらいだ。
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いわゆる「推し」を失った今、あえて大宮公園小動物園へ足を運ぶことはないだろう。
だがいつか、またカピバラを飼育・展示する日が来たならば、その時は必ずやこけら落としに駆けつけると誓おう。
わたしの初めての”推しカピ”であるピース、そして天国で再会したであろうラメールとチェリーの三兄妹は、日本でもっとも有名かつ愛されたカピバラだった。そんな彼ら・彼女らの日常を伝えてくれたねず子さんにも、心からの感謝を伝えたい。
——みんな、ありがとう。











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