投資の勉強をしている友人から、ちょっとした相談を受けた。結論からいうと、特殊詐欺被害に遭う一歩手前だが、その被害を回避することは不可能と思われるため、やはり詐欺に遭ってしまった・・という感じだろうか。
しかし実際の相談というのは、取引に伴う資金調達を行った友人が、その金額を返還しない(無論、詐欺犯に返金する必要などないが)ことで、契約違反で訴えられないかどうか・・という、契約上の法的な効力についてだった。
当然ながら、社労士のわたしが答えられる内容ではないので、弁護士の友人に確認しつつ橋渡しをしたのだが、個人的に興味を持ったのは"当該外国為替ブローカーの本拠地"だった。
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ヨーロッパに本社がある当該ブローカーは、外国為替や石油・金属などの先物取引、近年では仮想通貨取引サービスなども提供している・・と謳っている。
この企業が怪しいかどうかはさておき、欧州某国の首都に本社があるはずだが、サイトに記載された所在地は「ニューヨーク」と書かれてあるじゃないか。おまけに、アヴェニューもストリートもすっ飛ばして、堂々と「ワールドトレードセンター」と記載されているのだ。
・・まぁ、世界的に有名な建物だからこそ、番地も通りも不要なのかもしれないが、やはりこの辺りをきちんと記載しておかないと、"怪しさ"の引き金となってしまうことを、当該法人は理解するべきだろう。
ちなみに、サイトに記載された連絡先が、世界共通で「+81」から始まる携帯番号だったことも見逃せない。要するにこれは"日本"を意味するからだ。
(念のため、国番号についてアメリカは+1、フランスは+33、イギリスは+44である)
この辺りで、もはや当該ブローカーが潔白ではない雰囲気が漂うわけだが、厳密には"本家本元を騙る詐欺である可能性が高い"というのが正しい表現だろう。
なんせ、オフィシャルサイトのリンクをよくよく見てみると、企業名に余計なアルファベットが入っていたり、繰り返しになるが連絡先が日本の携帯電話だったりと、随分お粗末なものだからだ。
(事実無根であろう本家は、迷惑被りまくりだな・・・)
ところが、友人が融資を受ける際に交わした契約書には、ニューヨークとは別の「とある住所」の記載があった。そしてわたしは、その住所地に思わず釘付けになってしまったのである。
(せ、セントビンセント及びグレナディーン諸島・・って、どこだ?)
セントビンセント及びグレナディーン諸島(以下、セントビンセントと呼ぶ)は中南米に浮かぶ小さな諸島で、五島列島の福江島と同じくらいの面積。トリニダード・トバゴの北に位置し、人口11,2万人は東京都昭島市と同程度の人数である。
略史によると、1498年にコロンブスにより発見され、1783年に英国植民地となった。その後、1979年に独立して現在に至るわけで、確かに途中でヨーロッパを挟んでいるあたり、今回のブローカーが「存在しない」とは言い切れない根拠となっているわけだ。
さらに読み進めると、主要産業として観光業と農業(バナナ産業)と書かれてあるではないか。バナナ好きのわたしは、この素晴らしい産業構成に食いついた。
セントビンセントという国に馴染みはないが、バナナが主要産業である国に悪い人間が住んでいるはずはない——。
そんな独断と偏見を元にセントビンセントについて調べていると、なんと、映画「パイレーツ・オブ・カリビアン」の撮影地だったことが発覚。しかもリアルに海賊行為のホットスポットとなっているこの国は、観光立国とはいえ決して治安がいいとはいえない模様。
おまけに、失業率は21%(2021年)ということで、とんでもない失業率を叩き出しているではないか。
算出方法は異なるかもしれないが、日本の完全失業率は2.6%(2023年)であり、セントビンセントのお隣さんのトリニダード・トバゴは、3.81%(2022年)という低い失業率であるのも意外だ。
(それにしても、セントビンセントのバナナはどんな味なんだろう・・)
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某外国為替ブローカーを騙る"ニセモノ"の化けの皮を剥ぎながら、「世の中には、色んなやり方で金儲けを図る人種がいるもんだ」と、少々感心するわたし。
とはいえ、日本から32時間以上かかるセントビンセントという国へ、一生のうちに一度は訪れてみたい・・と思わせてくれたことは、詐欺被害に遭った友人には言えないが、ある意味この詐欺ブローカーに感謝するのであった。
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