冬の到来とともに繰り返される、私の過ち。

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東京は日曜日から冬の寒さに見舞われた。冬といっても、氷点下どころか日中は10度を超えるわけで、そこまで怯えるほどのことでもない。

ところが、なぜかわたしにはこの寒さに相応しい「上着」を持っていなかった。

 

つい昨日・・土曜日までは、Tシャツに薄手のジャケットやフーディー一枚でちょうどいい気候だった。それが翌日を迎えた瞬間に、一気に冬へと様変わりしたのだから、寒さ以上に恐怖に震えるのもやむをえないだろう。

とはいえ、まだ外出の予定がなければそれでもよかったが、こんな日に限って朝から出掛けなければならず、羽織るものがない以上は内に着込むことでしか寒さを凌げない——。

 

防寒対策として重ね着をするデメリットは、屋外と室内との温度差の調整が難しいことだ。なんせ外が一桁の寒さでも、電車や建物の中は20度近くあるわけで、温度調節をしようにも着込んでいると脱ぐことができない。

おまけに、室内の温度に不相応な格好であることから、首も脇も腹も汗でびっしょりになる。ところがいざ外へ出ると、その汗が恐ろしい寒さに豹変し主であるわたしを襲ってくるわけで、寒暖いずれの地獄からも免れることはできないのである。

 

暖かい室内で汗をかき、極寒の屋外で震えあがり、なぜこんな思いをしなければならないのかと、服装のチョイスを恨んだところでもう遅い。そのせいで風邪でもひいたら、本末転倒も甚だしい——。

そんなことからも、推奨される格好は「厚手の上着を着ること」の一択なのだ。

 

・・という正論を叩きつけたところで、我が家には今の寒さに対抗しうる上着がないのだから打つ手がない。脇汗びっしょりの覚悟で5枚くらい着込むか、はたまた薄着で常にダッシュするか、この最低最悪な二択しか選択肢が存在しないのである。

(はぁ・・。脇汗は勘弁だから、寒かったら走るか)

そんな絶望感に打ちひしがれながら、踏ん切りがつかない状態でSNSをパラパラと眺めていたところ、友人のセレクトショップで"洒落たジャケットが入荷された"という情報をキャッチした。

それは、レトロな雰囲気が逆にオシャレな、コーデュロイボアジャケットだった。

 

ワークウェアをコアとしたアイテムが魅力のブランド、"BIG MIKE"。そのクオリティの高さから、米軍で採用されるほどの信頼と歴史を誇る。

友人が米国で買い付けてきたこのジャケット、外側は手触りのよいコーデュロイで、内側と襟がフワフワのボアでできている。さらに、何を隠そうこのアイテムは、冬場に牧場で作業をする際の防寒着として活躍した"ランチコート"なのだ。

 

冬の大地を駆け巡るカウボーイたちが愛用していた逸品に、日本で袖を通すことができるとは、なんという幸運だろう。おまけに、見た目以上に軽量なことから、長時間着用していても肩が凝ったり体が重くなったりすることもないのだそう。

加えて、カラーバリエーションは三色ある。・・デニムと合わせることを考えるとブラックが無難ではなかろうか、と脳内でイメージを膨らませるわたし。

 

(・・よし。ちょうど上着が必要だし、これを買おう!)

やはり新しい何かを手に入れると、自然と心が躍るもの。すぐさま友人へDMを送るとPayPayで支払いを済ませ、そのカッコいいジャケットの到着を待った。

もちろん、今日頼んで今日届くわけではないが、「これでもう、寒さを気にすることなく闊歩できる!」という安堵と幸福感に、思わずウキウキしてしまったのだ。

——あぁ、早く届かないかな!

 

 

・・勘のいい人は、もうすでにお気づきだろう。何を隠そう、わたしは半年前に冬服をクリーニングに出してから、今の今まで取りに行っていないのだ。だからこそ、冬に着るべき上着が我が家には存在しないのだ。

 

こうして毎年、なぜか上着ばかりが増えていく"怪奇現象"が繰り返されるのだが、それでもなぜか毎年、クリーニングのことを忘れてウキウキと新たな上着を買っては、クリーニング店へと回収に行くのである。

そして似たような色、素材、形の新旧ジャケットを見比べながら、「来年こそはこの失敗を繰り返すまい」と誓うのであった。

 

・・そういえば昨年も、今回と同様に「急に寒くなったから」と、友人の店でBIG MIKEのジャケットを購入したことを、いま思い出したのである。

来年こそは、来年こそはこの過ちを繰り返すまい——。

 

サムネイル by 希鳳

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