トリプレッタカップ~小さなピッツェリアの大きな挑戦~

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今日は、とある「大会」に釘付けの一日だった。

活気あふれる会場の雰囲気と、一枚に賭ける参加者の意気込みに、パソコンを打つ指もついつい止まってしまうのである。

 

その大会とは、トリプレッタカップという名の、ピッツァの大会だ。

 

トリプレッタとは、イタリア語で「ハットトリック(サッカー用語)」を意味し、さらに、ピッツァイオーロ兼オーナーの太田賢二氏が運営する、ピッツェリアの名前でもある。

そして今回、個人店としては日本初となるであろう、ピッツァの大会を開催することとなったのだ。

 

普段から見慣れた景色にもかかわらず、ちょっとした緊張感が走る。

 

大会参加者は、北海道から九州まで幅広いエントリーとなり、トリプレッタカップへの関心の高さと熱意が感じられた。

なかでも印象的だったのは、新潟から子供連れで参戦したピッツァイオーロだ。どうやら雪の影響と渋滞により、到着するのに7時間もかかてしまった様子。そして出番ギリギリに入店すると、彼はそのままスタートとなった。

ところが終わってみれば、なんと、マリナーラ部門で堂々の一位に輝いたのだ。

 

「遅刻厳禁のため、失格です」などと、固いことを言わない太田氏も漢である。

 

大会の様子はYouTubeのライブ配信により、全国、いや、世界中のピッツァフリークに向けて発信された。

そのため、近所に住んでいるにもかかわらず、ズボラなわたしは朝からスマホにかじりつき、トリプレッタカップの様子を食い入るように見守っていたわけだ。

 

今回の大会は4部門に分けて開催された。

まずは「マルゲリータ部門」、次に「マリナーラ部門」、そして「ピッツァフリッタ部門」、最後に「ヴェロチッタ部門」という順序で審査は進んだ。

 

そういえば、ユニークなアイディアに驚かされた。それは、マルゲリータ部門とマリナーラ部門について、トリプレッタの常連客から6名を選び、彼ら彼女らが審査に参加していたことである。

もちろん太田氏のチェックも入るが、常日頃から美味いピッツァを食べ慣れている「顧客の舌」を甘く見てはいけない。その辺の「食通」よりも、シビアで繊細な評価を下す可能性もあるからだ。

 

その一方で、参加者の顔ぶれも千差万別だった。

ピッツァ職人歴15年のベテランから、本業は消防士だが趣味が高じて庭にピザ窯を作ってしまった素人まで、ピッツァ愛に溢れる大勢の参加者が集まったことは興味深い。

 

わたしが個人的に応援していたのは、長野県・南箕輪村から参戦したピッツァイオーラ(女性)だった。普段は、電気窯を使ってピッツァを焼いているとのこと。

「今日はチャレンジのつもりで来ました!」

そんな彼女の初々しい発言に、思わず「頑張れ!」という言葉が出てしまったのだ。

 

余談だが、トリプレッタに設置されているピッツァ窯は、世界中で支持されるナポリ窯の巨匠、ステファノ・フェラーラ・フォルニ社の固定式ピッツァ窯である。

イタリアから職人を招いて、現場で一から窯を作るとあり、このような貴重な窯でピッツァが焼ける機会はそうあるものではない。

よって、長野から参戦したイオーラも、審査結果以上に大きな収穫と経験を手に入れることができたはずだ。

 

ほかにも、素人ではないがピッツァイオーロ一年目の新人や、イタリアワインと食材を輸入する企業の営業担当者など、トップオブトップだけが集まる大会ではなかったことも、トリプレッタカップの面白いところである。

 

なお、YouTube規約の関係上、BGMを流せない状況での配信を強いられた本大会。

ところが、店内から聞こえる赤ちゃんの泣き声や、店舗にかかってくる電話の呼び鈴など、ごく日常的で自然な物音が、意外にも「心地よいBGM」として視聴者に届いていたことを、忘れてはならない。

おかげでわたしも、まるで店内にいるかのような雰囲気を楽しむことができたわけで。

 

そんなこんなで、手作り感満載のトリプレッタカップは、朝から晩まで多くの笑顔とドラマを与え続けてくれた。

 

ピッツァの生地を「これでもか!」というほど、みにょーーんと伸ばしたり引っ張ったりするのに、誰一人として生地に穴をあける参加者はいなかった。

 

また、生地を番重(ばんじゅう)から出す際に、何らかの影響でうまく切り分けられない参加者がいた。やはり納得がいかなかったのだろう、彼は成形途中で手を止めると、生地を丸めて隅っこへ置いてしまった。

そして、減点覚悟で新たな生地を取り出すと、再びピッツァを作り直したのだ。

――そんな彼の、勇気ある決断に心打たれた。

 

たかがピッツァ、されどピッツァ。

ステータスもなければ協賛スポンサーもいない、オマケに宣伝もインスタのみという、無名に近いピッツァの大会。

あえて言葉にするならば、「小さなピッツェリアの大きなな挑戦」とでもいうべきか。

 

だがこの挑戦が、ピッツェリア界の未来を変える第一歩となることは、間違いない。

 

 

参加者の皆さん、そしてラ・トリプレッタの皆さん、準備期間も含めて本当にお疲れ様でした。

せっかちなわたしは、第二回のトリプレッタカップを、今から楽しみにしています!

 

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