付き合っているオトコを捨てるのは簡単だが、安物とはいえ、わざわざ買った日用品を捨てることに圧倒的な躊躇を覚えるわたし。
「安物なんだから、買い直せばいいじゃないか」
たしかにその通りである。
だがAmazonで購入した日用品が、届いたその日に壊れた場合、もったいないので捨てるに捨てられず、かといってわざわざクレームするには値段が安すぎるため、地団太を踏みながらも壊れた「ソイツ」を修理する羽目になる。
その「デキソコナイ」の正体は、洗濯ネットだ。
衣服の色落ちや型崩れ、また、洗濯物同士が絡まるのを防ぐためにも、洗濯ネットは洗濯における必需品といえる。
ズボンのような細長い衣服をそのまま洗濯すると、タオルやシャツと絡まり大変なことになる。そこで、洗濯ネットへ分けて入れることで、衣服同士が絡まるのを防ぐだけでなく、洗濯槽内での偏りも防ぐことができるのだ。
そして、色落ちの予防にも洗濯ネットはオススメである。
洗濯用洗剤の中には、衣類の白さを保つために「蛍光増白剤」が入っているものがある。無論、これは色落ちを促進させるため、真っ白いタオルやシーツ以外には使用しないほうがいい。
ちなみに通常の洗濯用洗剤は、中性と弱アルカリ性に分かれるが、色落ちを気にするならば中性を選ぶべき。さらに、個別にネットへ入れることで、衣服同士の摩擦による色落ちを防ぐことができ、長期間にわたり鮮やかな色を保つことができるのだ。
このように、絶対的に使ったほうがいい日用品の一つが、洗濯ネットなのである。
これまで使っていたネットが破れたため、評価の高い安物ネットをAmazonで購入したわたしは、到着とともに大喜びでジーパンを閉じ込めて洗濯機をスタートさせた。
そして一時間後。洗濯槽から大きなネットを取り出し、ファスナーを開けようとした瞬間――。
(ファ、ファスナーが開かない!!!)
スライダー(ファスナーについている取っ手の部分)を引っ張るも、びくともしない。
おまけに、下止(エレメントのケツ部分)がゴムで覆われており、奥まで入り込んだスライダーがゴムの下敷きとなっているため、指を突っ込まなければ触れることができない。
スライダー保護のゴムは、小学生の上履きの甲部分に張られている、あの「白いゴム」でできている、そのため、ゴムの弾力はかなりしっかりしており、指を2本入れるのは至難の業。
それでも辛うじて指先でスライダーの先端を挟むと、なんとか引っ張り出そうとするが滑り落ちてしまう。それを何度も繰り返すうちに、指先と爪、そして心までもがボロボロになった。
(ならば、後ろから押してみるか・・・)
仕方なく、スライダーのケツ部分を爪で押しながら、前からも引っ張ってみる。
――微動だにしない。
スライダーが動かないということは、エレメントとの噛み合わせが上手くいっていないことを意味する。かといって、下止のおかげで後ろへ抜くこともできない。
目視できない部分をイメージし、なんとかスライダーにエレメントを噛ませる努力を続けること10分。わたしは一つの決断を下した。
(この上履きゴムを切ろう)
ゴムが邪魔をしているわけではないが、やはりスライダーに触れられないストレスは大きい。
言うまでもなく、このゴムのおかげで洗濯途中のスライダーへの衝撃はかなり和らいでいる。さらに他の衣類と接触したり、引っかかったりするリスクをゼロにしてくれるゴムには、感謝しかない。
だが今、ある意味「緊急事態」なのだ。
洗濯はとっくに終わっているにもかかわらず、いまだにネットから出すことができないため、これが夏場ならばそろそろ臭くなる頃だろう。
つまり、いち早くネットからジーパンを救出しなければならず、そのためには、断腸の思いでゴムを切り裂くしかないのだ。
こうしてわたしは、我が家における唯一のハサミである「サムギョプサルを切るハサミ」で、上履きゴムをジョキンと真っ二つに切った。
これにより、露わになったスライダーをつまむと、前後左右にガチャガチャと乱暴に動かしてみた。するといきなり、スライダーがシャーっと滑りだしたではないか!
(直った!!!)
大喜びでジーパンを干すわたし。残念ながら、上履きゴム部分は死んでしまったが、洗濯ネットとしての機能を失うことはなく、翌日もその翌日も洗濯の際にお世話になったのである。
しかし、翌日もその翌日も洗濯のたびに、スライダーが固着してしまい10分以上のロスを招いた。
エレメントが縫い付けてある「テープ部分」が柔らかすぎて、どうやらスライダーから外れてしまう様子。そこで、下止部分をつまんでテープをピンと伸ばし、スライダーのケツを指で何度も押しながら、タイミングが合えばスライダーを戻すことができる。
だがタイミングが合わなければ、何分、いや、何十分もこの作業を繰り返さなければならず、ものすごいストレスとなる。
この無駄な時間を、なにか建設的なことに使えたら、わたしの人生はもっと充実するだろう――。
この無駄な時間により、ストレスホルモンが分泌されることで、わたしの人生は台無しになっているのではなかろうか――。
そんな葛藤を抱えながら、今日もわたしは洗濯ネットとの格闘を繰り広げるのであった。
(今日こそは、新しい洗濯ネットを買うぞ・・・)
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