わたしが住む白金という地域は、休日になると部外者の往来が減るため空気が澄んで過ごしやすくなる。殊にわたしの家が駅の近くということもあり、多くの会社が休みとなる日曜日や祝日は、まるで年末年始のオフィス街のように閑散とするのだ。
だが、そこで暮らすわたしからすると、スーツに身を包んだビジネスマンがいないというだけで街の景色がグッと豊かになるため、休日の近所をぶらつくのは気分がいい。
そんなわけで、ヒトや車の少ない白金高輪駅周辺をうろついた(パトロールした)後に、白金高輪商店街へと歩を進めたわたしは、行きつけのベッカライ(ドイツパンの店)に向かった。
徒歩圏内にこんな美味いパンを売る店がある、というラッキーにニヤニヤしながら店のドアを開けると、馴染みの店員がいつもの笑顔で待ち構えていた。店内はわたしと彼女の二人だけなので、ロッゲンブロートとゾンネンブロートの違いを存分に語り合いながら、目に留まるパンを片っ端からトレーに載せていくわたし。
するとそこへ、続々と客が入店してきた——あぁ、またか。
そもそもこの店が人気なのは事実だが、にしてもわたしが”空いている店”に入るとなぜかそのうち混んでくる・・という現象は、偶然の一言では片づけられない確率で起きるから不思議。
パン店に限らずカフェや飲食店、さらにはガラガラのクリニックですら、診察を終えて待合室に戻ると、もうすでに数人の患者が待機している有り様。
そしてわたしは、ヒトが嫌いだ。とはいえ会話をするのは好きだが、それは相手が「一人の場合」に限定される。複数人での会話は苦痛以外のなにものでもなく、早く帰りたいな・・と常々感じているわけで。
そんなわたしは、突如現れた大勢の客と入れ替わるように、店員との会話を止めて店を出た。しかしながら、季節限定のキャラメルポワール(洋ナシとキャラメルクリームが乗ったパイ)を注文しているので、しばらくしてから——店内から客がはけた頃に再び訪れようと考えていた。
そこで、近所のコンビニでコーヒーでも買おうと、大通りを渡ってファミマへと踏み込んだ。さすがは休日、広い店内はがらんとしており、客はわたし一人。対する店員は——外国人の店員が二名ほど、レジ付近で作業をしている。
それにしても、無人レジを利用すると店員と目を合わせることも会話を交わすこともなく終わるので、よほどのことがない限りコミュニケーションスキルがなくても店員の仕事は務まりそうである——あれ、Lサイズのカップはどれだ??
ホットコーヒーとアイスコーヒーを購入したわたしは、とりあえず冷凍棚からアイスコーヒー用の氷を取り出した。なお、アイスのカップにはサイズが記されているので、間違えることなく手に取れるのだが、ホットコーヒー用のカップにはサイズ表記がないため、意外と迷う可能性があることに気がついた。
山積みにされた「F(ファミマのF)」のマークの紙カップ——いやいや、どうせならLとかMとかサイズを記せよ!!
たしかに、この紙カップを手にしながら外を歩けば「あの人、ファミマのコーヒー飲んでる」と、ちょっとした宣伝になるのは理解できる。だが、もしもサイズを間違えてMのカップにLのコーヒーを入れてしまったら、どうしてくれるんだ? コーヒーは確実にこぼれ出てしまい、支払った代金が無駄になるではないか!
そこでわたしは、おそらくMとLサイズであろうカップを手に取り、外国人店員にどちらがLかを尋ねた。すると彼は、
「ソッチ」
と、どちらか分からない方向を指さしたのだ——ソッチって、ドッチだよ!!
こんなことなら、一番デカいサイズを選んでおくべきだったと後悔するも時すでに遅し。最大か最小ならば明らかに判別できるし、LLサイズのカップは異様に細長くて奇妙なフォルムなので、店員に確認するまでもなく手に取ることができたはず・・。
何はともあれ、ホットとアイス両方のコーヒーを手に入れたわたしは、いそいそとベッカライに戻った。店内を覗くと客の姿はなく、いつもの彼女が待ち構えている——よし、これで安心しておしゃべりができる。
店内にて、購入したパンを受け取りつつ体重が7キロ増えた話や駅の階段を踏み外してコンバットベースで着地した話などに花を咲かせていたところ、またもや客が入って来た。今度は、外国人二名と日本人二名、さらにその後ろに日本人男性が待機している。
こうして、新たな客に押し出されるように店を後にしたわたしは、パンとコーヒーを両手に抱えてトボトボと家路に就いた。
休日の昼下がり、犬の散歩だかヒトの散歩だか分からない散歩を楽しんだり、ジャージにメガネ姿で買い物に出かけたり、明らかに地元の人間しか存在しないであろう路地裏は、平日とは異なる顔ぶれで安心感に満ちている。
気合の入った服装の者など皆無、犬もヒトも地元民であることがうかがえる。あぁ、なんて平和なんだ——。
*
以上、白金の休日ぶらり旅(パトロール)でした。










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