廻る!保険料ロンダリングスキーム

 

昨年末あたりから、国会議員の「国保逃れ」のニュースが巷を騒がせているが、「法の抜け目をかいくぐっているだけで、合法だ!」と主張してきた者に対して、哀れかつ愚かに思うと同時に、そういうことが「正しい」「問題ない」と思える脳みその程度・・というか、判断能力のお粗末さがどうも理解できない。

 

彼らが用いたスキームは、収入のメインは個人事業主での稼ぎだが、法人の役員(社団法人の理事などを含む)に加わることで”社保優先”の法則により、法人経由で社会保険(健康保険・厚生年金保険)に加入する——というもの。

これだけでならば、そこまで悪質な違法性は感じられないだが、ここにいくつかの要素が加わるとたちまち不正となる。まず一つは「法人の業務に携わっていない『名ばかり役員』であるにもかかわらず、常勤役員として報酬を受けていることを理由に社保へ加入する」というもの。さらに「経営に参画している実態がないにもかかわらず、月に数万円の『会費』や『宣伝費』という名目の費用を法人へ支払い、それを社会保険料としてロンダリングする」というオマケ付き。

 

要するに、高所得者が高額な国民健康保険料を支払うことを嫌がり、安価な会費や経費を支払うことで”名ばかり役員”に就任し、かつ、低額の役員報酬を受け取ることで低い等級の社会保険料を確定させ、自身で支払う経費の一部を社会保険料に充当するという”自己完結型の保険料ロンダリングシステム”を構築しているのだ。

まぁ「ズルい」と言ってしまえばそれだけのことだが、むしろこのような違法スキームを考える者たちが浅ましいし、社労士からすると「悪意ある敵」と言える。そして、このような見事な不正手段を、自信満々で企業へ持っていくのがコンサルティング業者だったりするから腹が立つ。

 

先日、この手法とは異なるが「(不正な)社会保険料削減スキーム」について相談を受けたわたしは、「未だにそんなやり方が通用すると思っているのか・・」と、むしろ懐かしさを覚えた。それは、労働者に対して支払う賃金を「給与」と「業務委託費」とに分割することで、社会保険料を抑えることができるというもので、15年前くらいから存在するやり方だった。

しかも驚くことに、報酬を分割して社保料を抑える手法は「国が認める合法なやり方で、すでに多くの企業が採用している。会社にとっても従業員にとってもメリットしかない優れた方法」と謡っている模様——いやいや、どこの国が認めたのか証拠を示せや。「多くの企業」の名前を挙げてみろや。

 

これは、社会保険料云々よりも労働基準法第24条(賃金の全額払い)に違反するため、前出の脱法スキームよりも罪は重い。だが、労働法に明るくない素人からすれば、「国が太鼓判を押すやり方だから、問題ないはず!」「多くの企業が取り入れているなら、安心!」と思ってしまうからたちが悪いのだ。

よって、もしも社会保険料を削減するためのスキームがあるとすれば、「毎年3・4・5月の残業を極力減らすこと」くらいだろう。とはいえ、ちょうど年度末と新年度を挟む繁忙期であり、そこで残業を減らせといわれても無理がある。その結果、毎年行われる定時決定(算定決定)を劇的に変えることはできず、なんだかんだで妥当な等級=保険料を納付することとなるのである。

 

これが嫌ならば、そういう仕組みを作った国や法律を変えるしかないが、それをやるべき立場にある国会議員らが、自ら不正に足を突っ込んでしまったから大問題となったわけで、そのくらい国を動かしたり法律を変えたりすることは難しいのである。

 

 

ということで、今年3月18日に厚生労働省は一連の流れを受けて一つの通知を発出した。

相手が国会議員だったことで、話題がここまで”燃えた”という裏事情はあれど、不正にメスを入れるスピードの速さは見事だったわけで、ならば今後も国会議員が身を挺して不正を暴いていけばいいのでは——それこそが、国民の代表としてあるべき姿であり、尊敬に値するやり方なのではなかろうか。

 

(そうなれば、国会議員というのは本当に大変な職業になる。あぁ、もはや彼ら彼女らに足を向けて寝ることなどできないわ・・となればいいのに)