武者震い——?

 

(あの「謎の主張」に名称をつけるとしたら、なんて呼ぶのがいんだろう。空威張り? いや、威張っているわけではないし。ならば、虚勢を張る・・が近いのか。でもなんで虚勢を張る必要があるんだろうか)

やはり、どう聞いても「ブーブー」と軽くいびきが聞こえてくる動画を見返しながら、わたしは奴の真意を慮(おもんぱか)るのであった。

 

 

わたしの相方は、自身が寝落ちをすることに対して「謎の主張」で食い下がる癖がある。

別に寝落ちするのが悪いわけではないし、そもそも就寝が目的なのだから、いつの間にか寝てしまったならば素直にそれを認めればいいと思うのだが、なぜか強情に「寝ていない!」と言い張るのだ。

 

ちなみに、奴の言い分は「YouTubeやネットフリックスを見ながらでないと、眠ることができない」というのだが、そんなものがなくても十秒程度で意識を消失しているので、これは嘘である。

にもかかわらず、寝落ちした状態を確認した上で——具体的には、ブーブーといびきをかきはじめたのを確認した上で、(動画を)流しっぱなしの状態で握りしめているスマホを手から取りあげて止めると、その反動で目を覚まし「いま見てたのに、勝手に止めないでよ!」と、烈火のごとく怒り出すのだ。

(いやいや、目も閉じてたしいびきもかいてたし、完全に寝てただろ・・)

そして、そのまま無視して放っておくと、十秒後には再び「ブゥ」という音(いびき)とともにあの世へ・・いや、夢の世界へ旅立っているのだ。

 

どうせ寝るためのルーティンなのだがら、あえて「まだ起きている」という主張をする必要はない。にもかかわらず、なぜスマホを取りあげると「見ていた」「起きていた」と虚勢を張るのだろうか。

むしろ、スマホのバッテリー節約のためにも「動画を止めてくれて、ありがとう」ではないのか? こちらは、完全に寝落ちしたのを確認した上で没収しているのだから、礼を言われる筋合いはあれど逆切れされるいわれはない。

ていうか、寝落ちすることに何かネガティブなイメージでもあるのだろうか——?

 

 

そんな「謎の逆切れ」をする相方が撮影してくれた、ピアノ発表会での演奏動画を見返しながら、演奏開始後7分が経過した時点で「雑音らしき音」を改めて確認するわたし。

(なんだろう・・エアコンのファンがどこかに触れて一定のリズムを刻んでいるような、微妙な振動音というか雑音は)

ピアノの音よりは小さいが、明らかに耳障りな”低音”が気になるわたしは、その正体を探った。そして、すぐにそれが「相方のいびき」であることを突き止めた。

 

そこで本人に、”まともな演奏動画が存在しなくて無念であること”と、”二年に一度の発表会であるにもかかわらず、なんとも不本意であること”への嫌味を込めて「撮影してくれた動画にいびきが入ってて、記録用として使えない」という怒りのメッセージを送ったところ、まさかの返事がきたのである。

 

「あ!ちがうちがう(笑)ちょうどその頃、演奏にしびれて震えてグッときて、息吸うの忘れて、ちょっと変な感じになってた」

・・・は?

「よく見ると手振れもしてるし・・でも、本当に素晴らしかった!」

・・・いやいや、手振れしてるってことは半分寝てたってことでは?

「眠くなったわけじゃないよー、本当に演奏がすごくて武者震いしたの。すごかったよ!」

・・・。

 

息を吸うのを忘れて変な感じになってたから「いびきのような音」が入っていて、演奏に感動して武者震いした結果「手振れのような乱れ」が起きた・・と。

——それはさすがに無理があるのでは。

 

 

とにかく、否が応でも「寝ていない」と主張する奴の脳みそをかち割って、その根源にある謎のプライド(?)を見てみたいのである。

 

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