フェミ強し?

 

これは偶然などではなく、どう考えても女性のほうが度胸がある・・というか行動力があるというか、「正しいことを素直に行動に移せるタイプが多い」と感じるのである。

 

 

中途半端に混雑している新幹線の自由席。二人掛けの窓側は完全に埋まっており、通路側のみ空いている。そして、三人掛けも同様に窓側はすべて占拠済みで通路側もほぼ誰かが座っている状況。中には、窓側とその隣に並びで乗客がいるため、通路側が空いているシートもあるが、できれば隣が空いている状態で座りたいので、次の車両へと進むことにした。

こちらも先ほどと同じ状況ではあるが、唯一、三人掛けの窓側だけに乗客が座っているシートを発見したわたしは、すかさずそこへ滑り込んだ——これだから、自由席はいやなんだよな。

 

なんとか無事に着席した後、ガサゴソとレジ袋から弁当を取り出すと、乗車前に購入した「深川めし」のフタを開けて一気に掻っ込むわたし。

あぁ、新幹線の車内で食べる弁当というのは、なぜこんなに美味いのだろう。決して「あなごが好き」なわけではないが、車内で食べるならばこのくらい「好きではない弁当」のほうがいい——なぜかそんな気になるから不思議である。

 

そして大宮駅を発車した新幹線は、新たに乗り込んできた客により混雑度が増した。とその時、わたしの横でベビーカーを押しながら空席を探す若い家族の姿が目に入った。

車内の状況としては、相変わらず二人掛けの窓側はびっしり埋まっており、通路側がポツポツ空いている程度。ちなみに、三人掛けの通路側に陣取ったわたしの隣は空いており、窓側には男性が着席している。

(要するに、私がどけば横並びで二人分を確保できるってことだよな・・はぁ、これだから自由席はイヤなんだ)

そう、わたしが席を立てばこの家族の半分が助かるのだ。おそらく母親と妹がここへ座り、父親と兄が二人掛けの通路側に座れば一件落着となるだろう。

 

そこでわたしは、大荷物とベビーカーで身動きが取れない母親に向かって、「電話する用事があるから、ここ座っていいよ」と声をかけ、すぐさま空になった弁当とコーヒーの入ったタンブラーを手に取り立ち上がった。

——座席を必要とする者へ席を譲る行為が嫌なんじゃない。目的地までの時間を、作業なり仮眠なり集中的に使いたいと考えるわたしにとって、否が応でも「シート難民」の存在を気にしなければならない自由席という空間は、気持ちが落ち着かないから嫌なのだ。

 

とはいえ、シート難民を無視して座り続けられるほど太々しいいメンタルは持ち合わせていないし、腰痛持ちのわたしにとっては座り続けることより立ち続けることのほうがラクなので、大した決断ではなかった。

そんなわけで、席を後にするべく颯爽と一歩を踏み出した瞬間・・なんと、二人掛けの窓側に座っていたサラリーマンが立ち上がり、父親へ声をかけたのだ。

「私、次で降りるのでどうぞ」

すると、その後ろに座っていた男性も立ち上がり、

「私が前へ移動するので、ここへ座ってください」

と、続々と「離席」の申し出が飛び交うではないか!!

 

そんな「流れ」にプレッシャーを感じたのか、わたしの二つ隣に座っていた男性までオロオロと荷物を片付け始める始末——。わたしが立ち上がったことを皮切りに、突如、ゲルマン人もビックリの「乗客大移動」が始まったのだ。

 

これはすなわち、子連れ家族が立ち往生している姿を見た「座席確保者」たちは、席を譲ろうか否か迷ってはいたが、それを口にする勇気がなかったということか。しかも、立ち上がった全員が男性(乗客のほとんどが男性だった)であり、その先陣を切ったのは女性であるわたし——。

(なんか、滑稽だな)

 

立ち上がった者もそうでない者も、少なからず皆いいヒトであろう。だが、自ら立ち上がることのできない優柔不断さは、男性特有の「カッコつけ」や「我関せず、事なかれ主義」的なものと推測できる。

そう考えると、やはり女性のほうが「なりふり構わず本能的に行動する性質」を持っているのだろう。

 

 

慌てて席を立ったわたしは、ゴミやらタンブラーやらパソコンやらを雑多に抱えていた。そこで、たまたま発見した空席(隣に乗客がいる)に荷物を置いて、持ち物を整えた上で改めて車両を出ようとしたところ、「ここ、人がくるから荷物おかないで」と言ったオッサンの顔を、わたしは一生忘れない。