初めての「追い〇〇」の結果、改めて思う”拗らせマンション事情”

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巷では「追い〇〇」が流行っている・・というか、そういう食べ方が当たり前に浸透してきた。そもそもの始まりは「追いがつお」だろうか——。

かつおだしで煮込んだ料理の仕上げに、もう一度かつお節をふりかけるなどして風味を追加することを”追いがつお”と呼ぶそうだが、料理をしないわたしには馴染みの薄い言葉。むしろ、追いバターや追い生クリーム、追いチーズあたりのほうが、想像するだけでヨダレがじわじわと湧いてくる。

 

ちなみに”追いバター”は、どんな料理に対しても使える、まさに必殺技といっても過言ではない手法である。バターたっぷりのクロワッサンに、さらにバターを塗りたくって食べる——あぁ、筆舌に尽くしがたいほどの至福の瞬間よ。

そして”追い生クリーム”も、バター同様に夢のような食べ方なのだが、わたしの場合は一般的なソレとはちょっと違うのだ。なにが違うのかというと、料理に生クリームを追加するのではなく、生クリームたっぷりのパンケーキやプリンを食べつつ、さらに追加で生クリームを食べる・・つまり、ただ単に生クリームをおかわりするだけなのだ。

それでも、追い生クリームをするかしないかで、スイーツたちの評価も変わるのだから、やはり必要なことであり幸せな食べ方なのである。

 

珍しいところでは”追い七味”を実践していた時期がある。長野市にある八幡屋磯五郎は、1736年(元文元年)に創業した老舗の七味唐辛子店。そして長野で育ったわたしからすると、日常的に八幡屋磯五郎の七味や一味を使っていたので、それがたいそうな代物だとはまったく知らなかった。

しかし、東京へ来てから八幡屋磯五郎が高級な七味であることを知り、おまけに”日本三大七味の一つ”とまでいわれる有名店ということで、急に得意気な気持ちになった。それからというもの、そこまでピリ辛好きじゃないにもかかわらず、追い七味をするべく八幡屋磯五郎を持ち歩く日々が始まったのである。

 

そんな「追いキャリア」のベテランであるわたしが、じつは今日、現在のマンションにおいて初の「追い○○」を実践した。その名は「追い焚き」——。

 

誤解のないように補足するが、これまで一度も”追い焚き機能”を使ったことがない・・というわけではない。実家や過去に住んでいたマンションでは、追い焚きにより冷めた湯船を温めていたし、こういった機能を知らなかったあるいは使用経験がなかった・・ということではなく、あくまで現在のマンションに引っ越してきてから、そもそも風呂に入る機会がめっきり減ったため、湯船というものに浸かることがなかったのだ。

しかしながらここ最近、腰の調子がよくないことから湯船に身を沈める習慣ができたため、「ならばついでに、追い焚き機能も使ってやろう」と思い立ったのである。

 

追い焚きが便利なのは、水道代が浮くことだろう。どうせわたし一人しか使っていない綺麗な湯なのだから、使いまわしても問題はない。だったら毎回排水せずにとっておいたらいいじゃないか——。

至極当然な考えであり反論の余地はない。こうしてわたしは、明日のために湯を張った状態で風呂を後にすることを決めた・・のだが、その瞬間にとある一つの疑問が脳裏をよぎった。

(ウチはバスタブしかないんだけど、髪の毛はどうやって洗えばいいんだろう・・)

 

人間の皮脂は40度の湯で洗い流せる——と、アンチエイジングの権威が言っていた。シャンプーやボディーソープのような界面活性剤を、大して汚れてもいない頭皮や身体にわざわざ塗りたくる必要などない・・と、耳にタコができるほど刷り込まれてきたわけで。

そこで、従順なわたしはその言葉を信じて湯船に潜ると、髪の毛をわしゃわしゃと揉み洗いした。そして勢いよく水面から顔を出すと、そのまま風呂場を後にした。

(よし、これで明日の水道代が浮いた!!)

 

——ところが翌日、「外出のためには、やはり髪の毛を洗う必要がある」ということに気がついたわたしは、なみなみと湯・・いや、もはや冷めて水となった残り湯が張られたバスタブを見つめた。

(追い焚きをするには、この残り湯は死守しなければならない。ということは、シャワーを引っ張り出すしかないのか・・)

あまり気乗りはしないが、シャンプーで湯船を汚すわけにはいかないことからも、浴室からシャワーを伸ばすと洗面所で髪の毛を洗うことにした。当然ながら鏡や洗面台にシャンプーが飛び散り、シャワーの湯もジャバジャバとこぼれたため、本来ならばまったく不要なはずの掃除をするハメに——。

 

 

そして今、わたしは一日の最後を湯船で迎えようとしている。たしかに、追い焚き機能は便利だし水道代の節約にもなる。だが、バスタブしかないわが家の浴室事情からすると、髪の毛や体を洗うことのほうが水道代よりも優先すべき事項である・・ということが確認できた。

(バスタブしかないくせに、なぜ追い焚き機能なんてついてるんだ)

——こういうところにも、”見栄っ張りマンション”の悪い癖が出てしまうのであった。

 

サムネイル by 希鳳

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