サラリーマン風アサシン、しれっと我が眼球を狙う。

 

(そのうちこれも「武器」として認定されるのかな・・)

そう思わずにはいられないほど、武器(仮)の所持者は悪意なく矛先をこちらへ向けており、「忍者と恐れられる日本人だからこそ、うまく交わせているのだ」と、怒りを鎮めつつ己をなだめるわたし。

戦いの舞台は駅構内の上りエスカレーター。ややもすると「アサシン」であろう相手は、サラリーマン風の装いでわたしの目の前に立っている。そしてその右手には、「いつでもお前の目玉をくり抜いてやる」と言わんばかりに、鋭利な先端が特徴的な”武器”が握りしめられていた——そう、長傘だ。

 

街中で金属バットやゴルフクラブを持ってうろついていれば、少なからず違和感を覚えるもの。「打ちっ放しへ練習に行くのかな?」と思わなくもないが、都心にバッティングセンターやゴルフ練習場は少ないことや、それらの道具を裸で持ち歩くことは通常しないため、違和感というより暴行などの恐怖を感じる。

だが「傘」というのは雨天時の必需品であり、野球のバットやサンドウェッジくらいの長さでありながらも”危険なアイテム”という認識はされていない。しかしながら、いま目の前にある傘の先端は明らかに凶器であり、もしもこの「サラリーマン風アサシン」が悪意を持って傘を背後へ突き出したならば、その尖鋭はわたしの眼球を突き抜け脳みそまで貫くのでは——という、考えただけでも身の毛がよだつ恐ろしい未来が想像できる。

 

余談だが、車内に(護身用の)スタンガンを置いた状態で車の運転をしていた友人が、たまたま遭遇した職質で車内チェックをされた結果、見事にスタンガンが発見された。それにより、悪事に手を染めていないにもかかわらず警察署へ連行され、指紋はおろかDNAまで採取された・・という事件?イベント?があった。

まぁ、護身用とはいえスタンガンを所持している時点でタダモノではないが、スタンガンは「自宅に置いておく分には問題ない」のだが、それを持ち歩いたり車内にある状態で移動したりすることは、軽犯罪法に抵触する。

 

軽犯罪法第一条「左の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。」とし、第二項では「正当な理由がなくて刃物、鉄棒その他人の生命を害し、又は人の身体に重大な害を加えるのに使用されるような器具を隠して携帯していた者」と定めている。

要するに、いくら「護身用だ!」と主張したところで、スタンガンを持ち歩くのは危害を加えるアイテムを所持しているのと同じであり、それを使用すれば「過剰な防衛」となる場合も。

 

・・そういえば、とある学会へ参加するべく国内線へ搭乗しようとした友人が、手荷物検査で「伸縮性の指示棒(スライドやパネルを指し示す金属棒)」を没収されたことがあった。

実物を見ていないのでなんとも言えないが、おそらく一般的な指示棒よりも長かったり太かったりしたのだろう。そのため、「この指示棒は、武器になりうる」と判断されて取りあげられたのだそう。

 

このように「金属製の棒」は危険物として扱われる可能性が高い中、金属製のシャフト(「中棒」と呼ばれる、傘の軸部分)と、尖鋭な先端(「石突」と呼ばれる、傘の先端部分)を兼ね備えているにもかかわらず、コンビニなどで売られている「長傘」は危険物として警戒されていないのが現状。

たしかに、金属バットやアイアンでフルスイングされたら、大ダメージどころか致命傷を負う可能性があるが、ビニール傘で叩かれたところで骨折すらしないだろう。しかしながら、この武器の使い方は「スイング」ではなく「突く」ことにある。

そもそも、傘の先端を「石突(いしづき)」と名付けたくらい、地面を突く目的・・というか、本来は傘布を保護するためのものではあるが、いずれにせよ強固な底辺部分を持ち合わせているのだから、そんなもので生身の人間を突いたら損傷は免れない。ましてや、眼球のような剝き出しの臓器を突けば、その奥に控える脳にまで影響を及ぼしかねない——。

 

その昔、男性が自転車2台を引きながら帰宅する途中、転倒した拍子にブレーキレバーが目に刺さり、それが脳まで到達したことで死亡・・という、まさかのショッキングなニュースを耳にした覚えがある。

とどのつまりは、どんなものでも使い方を誤れば凶器になるし、そのつもりがなくても「命を奪う武器」となりうるのだ。そしてこの「長傘」こそが、わたしの中で最も注意すべき”安全かつ手軽な武器”なのであった。

 

(高校の頃、自転車のタイヤに傘が刺さってぶっ飛んだことあるしな・・)

 

 

ゆっくりと昇っていくエスカレーターに身を任せつつ、目の前に立つサラリーマン風アサシンの背中を、殺意みなぎる疑いの眼(まなこ)で睨みつけるわたしなのであった。

 

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