巷では「スマホを使っていなくても、カメラやマイクは稼働しており常に監視されている」とか「IT企業の技術者ならば、パソコンのフロントカメラに付箋を貼っている」という、陰謀論めいた話がまことしやかに流れている。
だがわたしは、これがまったくの嘘だとは思っていない。
なぜなら、AIアシスタントであるアレクサは、常に「アレクサ」というウェイクワードに対して耳を澄ませているわけで、こちらからすると静かに眠っているかのように見えても、その実、彼ら彼女らはちゃんと起きている。
そういう意味では、稚拙で単純なニンゲンごときに見抜かれないよう、賢いAIは密かに目や耳を動かし続けている、というのはあり得ない話ではないし、むしろそれが信じられない・・というか想像できないようであれば、その者の感性や認識が古いといえる。
そして最近、近所のスーパーに搭載されたAIがわたしを狙っていることに気が付いたのだ。
「そんなバカな話があるか!」と一笑されそうだが、この現実というか圧倒的な確率を鑑みると、AIが監視およびコントロールを行っているとしか思えないのだ。ではいったい、どんな狙われ方をしているのかというと・・・
スイカが40%オフの時に限って、閉店時間までにスーパーを訪れることができない偶然について、これはもはやわたしの行動を監視されているとしか思えないほど、間に合わない日に限ってタイムセールを実施しているのだ。
「なんだ、そんなことか・・」と鼻で笑った者よ、耳をかっぽじってよく聞け。わたしはほぼ毎日、近所のスーパーであるクイーンズ伊勢丹へ通っている。そして毎回、スイカが値引きされていないかを確認するのが習慣となっている。
もしもスイカが値引きされていれば、すべて買い占めるのが恒例行事のため、買い物カゴのスペースを確保するためにも、入店すると真っ先にスイカ売り場へと向かうのだ。
ちなみに、スイカが安くなっていない場合はキウイを10個(5個入り×2パック)買うことにしている。その理由は、キウイは噛み応えがあることと、ずっしりとした重量感が得られることで、他の果物を買うよりも満足度が高いからである。
最近では、サンゴールドキウイがバケツに入って売られているので、バケツごとレジへ持っていくのがわたし流。そして、自宅へ持ち帰ったバケツにジャガイモやニンジンをぶち込んで、収納庫として利用しているのだ。
そんなわけで、ほぼ毎日——ときには、閉店間際にわざわざスイカ目当てで店舗を訪れることもあるくらい、積極的かつ周到な態勢でスイカ争奪戦に挑んでいるわたし。にもかかわらず、ここ一カ月・・いや、二カ月は値引きされたスイカを手に入れることができなかった。
振り返ってみると、近所に住む友人から値引き情報を得て、スイカを買い占めたのが4月26日のこと。その後、友人から何度も値引きの連絡をもらうも、その都度、わたしが閉店までに間に合わず見事取りこぼす・・という事態が続いたのだ。
そして数日前、
「40%オフあるよー」
と、値引きシールが貼られたスイカの画像とともに、友人からの情報提供があったのだが、その日に限って近所から離れたところにいたわたしは、またしてもスイカを買い占めることができなかった。
(あぁ、これで何連敗なんだろうか・・・)
おそらく、4月26日のタイムセールを最後にわたしは値引きされたスイカにありつけていない。無論、あまりのスイカ恋しさに定価で買い漁ったことはあるが、わたしにとって40%引きこそがスイカの醍醐味といえるため、この失態によるダメージは大きい。
しかも、友人はかなりの確率で値引きスイカと遭遇しているのに、わたしは2カ月の間で一度もお目にかかっていないのだから、違和感を覚えるのは当然。なんせ、スーパーへほぼ毎日通っているにもかかわらず、スイカの値引きに一度も遭遇しないというのは、そもそも不自然すぎる偶然ではなかろうか——。
(そうか、AIに監視されているんだ!!)
なるほど、それならば得心が行く。
閉店に間に合わない距離にわたしが居る時のみ、スイカを40%引きにしているのだと思えば、その確率が100%である理由にも頷ける。インターネットで繋がったわたしの位置情報やカレンダーと、クイーンズ伊勢丹が搭載する顧客管理AIとが連携し、「40%引きのスイカを買い占めるこの客を排除せよ」という指令が下されているのだとすれば、クイーンズ伊勢丹の完全勝利という見事な連携プレーの賜物である。
となると、こちらとしても何らかの策を練らなければならない。そもそも、現在地を知られないためにはスマホを持ち歩かなければいいのだが、そうなると電車に乗ったり連絡をしたりするのに不便である。ならば、あらかじめ友人にカネを渡しておいて、わたしの代わりに買い占めてもらうか——。
ヒトとAIによる「値引きスイカ争奪への仁義なき戦い」が、まさに今始まったのである。










コメントを残す