「一向に英会話が上達しない」と嘆く友人によるまさかのカミングアウト

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最終的に「あぁ、そういうことか!」と笑って・・いや、妙に納得してしまった会話がある。それは、英会話の勉強に何十年もの間カネと時間をつぎ込んできたが、「一向に喋れるようにならない」と嘆く友人に対して、イチイチ正論を投げつけていたわたしへ放った"最後の捨てセリフ"が、投げやりというかなんというか、ちょっと面白かったことだ。

 

英語で会話をすることは、英語圏で暮らす人間にとってはごく普通のことで、それは我々日本人が日本語を話すのと同じこと。さらに突っ込むと、日本語ほど難易度の高い言語も類を見ないわけで、それらを見事に使いこなしているのだから英語だってどうにかなるはず・・と思うのだ。

かくいうわたしも英語が堪能なわけではないが、コミュニケーションくらいはどうにかなるので、さすがに英会話スクールなどの英語教材にカネを払おうと思ったことはない。だが友人は、長期間にわたり多額の費用を払って"英会話スキル"を手に入れようとした。にもかかわらずいまだに、もはやシニアの域に達した今でも英語を操ることができず、それこそ自棄(やけ)になっているのだ。

 

社会的な地位もあり、むしろ立派な「先生」なのに・・いや、だからなのか。やたらと"英会話を習得すること"にこだわる友人は、しきりに「英会話は、集中的に習わなければ身につかない!」と主張していた。

たしかにそれは一理ある。たとえば数か月でも、英語圏の国で生活し友人をつくりコミュニケーションを図れば、否が応でも英語を話せるようになるだろう。さすがにペラペラとまではいかずも、英語のニュアンスやネイティブがしょっちゅう使う単語——会話のどこかに必ず"fuckin’ "をつけるとか——に気づくことで、それっぽい感じで受け答えができるようになる。

そういう意味では、短期集中は英会話を身につける近道といえるだろう。しかしそれならば、「英語が母国語の友達や恋人をつくればいいじゃないか」と、カネをかけずに英会話力を上げる方法を提案してみた。しかし、その言葉にはあまり耳を貸さず、「まぁそうなんだけど・・」と興味のない返事をし続けるのだ——なんでこの人は、やりもせずに流すんだろう。

 

そんな不毛な会話を幾度となく繰り返してきた我々だが、何十回目かの今日、まさかの新事実が発覚した。わたしも友人も、うんざりするくらいにこの話題について意見をぶつけあってきたが、ついに"その正体"がベールを脱いだのだ。

「だからぁ、いつも言ってるけど外国人と付き合えばいいんだってば!」

お決まりのセリフを吐くわたしに向かって、友人はまさかの告白をした。

「いや、もう付き合ったんだよ!しかも何人も」

 

(・・・・・え?)

 

一瞬耳を疑ったわたしは、改めて友人の顔を見つめた。ついに吐いてしまった・・という表情で苦笑いをする彼は、なんと、過去に外国人と付き合っていたのだ。しかも何人も——。

これで全てにおいて得心が行った。日本語が話せない外国人の彼女と付き合い(しかも複数人)、英会話スクールに通い、英語教材を購入し、なんなら仕事で数年間を米国で過ごしたにもかかわらず、いまだに英語での会話ができない・・というのだから、それは意固地になるのも当然のこと。

 

そして最後には、こんな奇抜な捨て台詞を吐いたのだ。

「だって、キミは早稲田大でしょ? 受験で英語あるし、最低限の英語の知識があるからこそ"英語なんて簡単だ"と言えるんだよ!」

これには驚いた。日頃から学歴主義に否定的な友人が、まさかの大学名をタテに反論してきたのだから。ちなみに彼は、難関私大の医学部出身であり、受験科目に英語がないはずはない——窮地に追い込まれたことで、おかしくなってしまったのか?

すると、これまたまさかのカミングアウトをしてきたのだ。

「僕は、英語の点数がとれなかったせいで浪人したんだよ。50点で合格だったのに、全然届かなかったんだ・・・」

これには返す言葉が見つからなかった。あぁ、本当に英語が苦手なヒトだったんだ——。

 

 

ヒトにはヒトの得手不得手がある。よって、自分の中での常識やセオリーを押し付けるのは、相手にとってはいい迷惑だったりするのだ。今後は、友人に寄り添って"英会話上達への近道"を探ることとしよう。

 

Illustrated by 希鳳

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